プリンシプルとルールの違いとは
ルールづくりで大切なのは、ルールとプリンシプルの違いを意識することだ。ルールは明文化された「規則」であり、考え方が異なる人や組織のあいだに適用される。一方、プリンシプルは自らの行動の基になる「原則や流儀」のことで、ルールと違って自律的なものだ。
なぜ2つの違いを意識すべきなのか。それは、ルールは可変でも、プリンシプルまで容易に変えてはいけないからだ。たとえば日本柔道のプリンシプルは、美しい柔道だろう。ルールづくりに参加するときにプリンシプルを忘れると、目先の勝ちを求めるだけになって迷走が始まってしまう。むしろ大切なのは、プリンシプルをルールに反映させること。柔道でいえば、美しい柔道をルールに取り込む戦略が求められている。
これをはき違えたのがプロ野球かもしれない。日米ともに、強いチームになればなるほど、自分たちが有利になるようにルールを考えすぎていないか。結果、資源が一部の球団に集中し、顧客離れを起こしている。プリンシプルなきルール改正は、全体を地盤沈下させるだけだ。
国論を二分する問題になっているTPPについても慎重さが必要だ。ルールづくりへの積極的な関与が重要であることは間違いないが、日本のプリンシプルを確認しておかないと、したたかなアメリカに翻弄される。
目先の利益に焦点を当てると、おそらく国内でもコンセンサスを取るのは難しい。輸出産業は関税撤廃によって有利になるとマスコミはいうが、すでに海外に多数の工場を持つメーカーにとって関税撤廃のメリットはほとんどない。むしろ現地の工場が受ける被害のほうが大きいくらいだ。
それぞれの思惑が分かれているときほど、プリンシプルに立ち返ることが求められる。日本の産業構造をどうするのか、貿易圏をどのようにつくるのか。ルールづくりへの参加は、大方針を固めてからのほうがよい。