三木谷&外資は要請無視の構え

2015年度入社の採用活動が一段落した8月、水面下では早くも16年度入社組の学生の争奪戦が始まっている。建築設計業の人事課長は「大手各社はこの夏から青田買いの場と言われているインターンシップを活用して採用活動を始めているのが実態だ。昨年に比べて企業の受け入れ数や学生の参加者も多く、どこの社も学生の囲い込みに躍起になっている」と指摘する。

米倉弘昌前経団連会長(写真右)の決定を榊原定征新会長(写真左)は守るのか。(時事通信フォト=写真)

事の発端は経団連が打ち出した採用選考活動の早期開始の自粛だ。13年4月19日、安倍晋三首相が経団連、経済同友会、日本商工会議所の代表に「採用広報は大学3年生の3月から、採用選考は4年生の8月から」にそれぞれ後ろ倒しするよう要請。これを受けて当時の米倉弘昌経団連会長が16年卒学生からスケジュールを変更する旨を発表した。

もともと大学関係者から就職活動の早期化が学業を阻害するという批判があり、安倍首相も学業に費やせる時間の確保や海外留学がしやすい環境整備の観点から早期化自粛を成長戦略(日本再興戦略)に盛り込んでいる。従来は経団連の「倫理憲章」の規約に賛同した会員企業が誓約書に署名する形で規制されてきたが、今回は新たに「採用選考に関する指針」に変えた。指針だと会員企業すべてが対象になり、拘束力が強いように思えるが、罰則があるわけではない。

また、経団連自身はこれまで採用活動の後ろ倒しに消極的な姿勢をとってきた経緯があり“本気度”を疑う声もある。経団連に加盟していない企業や外資系はそもそも守る気はない。IT企業を中心に組織する新経済連盟の三木谷浩史代表理事も「会員企業に(政府の要請を)要請することにはならない」と発言していた。このまま推移すれば「経団連の指針が見かけだけは守られ、実質は早期の青田買いが進み、結局は形骸化する」(前出・人事課長)可能性もある。

その舞台が冒頭でも紹介したインターンシップだ。職場体験を通じて学生の能力を見極め、これはと思う学生に入社を働きかける格好の機会でもある。日本経済新聞の調査では、16年卒学生のインターンシップ受け入れ企業は昨年よりも約6割増える見通しだ。また、「リクナビ」など就活サイト3社のインターン募集掲載企業数は延べ4645社、前年の1.6倍に達している(6月1日時点、エン・ジャパン調査)。