大手不動産業の人事課長は「来年8月の選考スタートまでにどれだけ多くの学生と接触するかが勝負。この夏休みの期間に実施するインターンシップは極めて重要だ。当社も大幅に受け入れるつもりだ」と意気込む。一応、文部科学省の指針や経団連の指針の手引では「インターンシップに際して取得した個人情報をその後の採用選考活動で使用しない」とクギを刺しているが、まともに取り合う企業はないだろう。

8月のインターンシップで学生に内内定を出しても、来年10月の内定式までは時間も長い。いかに学生をつなぎ留めるかも大事だ。そこでOB・OGが学生と個別に接触するリクルーター制の導入も増える。大手建設業の人事課長は「メガバンクや生保・損保などは内定辞退を防止するのにリクルーターの動きが勝敗を分けることになるだろう。これまでリクルーター制がなかった企業も導入するのは必至。当社も検討しており、他社の選考に参加しないようにいろんな名目で学生を拘束することもあるかもしれない」と語る。

かつてバブル期に学生をクルーズに誘って拘束した例もあったが再燃の兆しもある。だが、過熱気味の就活戦線で、被害を受けるのは中堅大学の学生と中小企業との指摘もある。

「特定の有名大学の学生の青田買いで採用余力のある大手企業の内定率が上がり、選考の解禁日にはほとんど大勢が決まり、余力のない大多数の企業は採用人数さえ確保できなくなる事態も。翌年の卒業間際まで獲得活動を続けないといけなくなり、これまでにない採用の長期化につながるだろう」(中堅IT企業の人事部長)

最終的に今回の採用活動の後ろ倒しは、「結局、勝ち組企業と優秀な学生だけが有利な施策」(建築設計業の人事課長)になりそうだ。

(時事通信フォト=写真)
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