本当にプライバシーは守れるのか

テレビドラマで捜査官が「最近の暴力団はメールを使わない。ファクスを使っている」と話すシーンがあった。メールは盗聴されたり、転送されたりして、秘密がもれやすいからである。なるほど、ファクスはいいかもしれない、読みにくい手書きならなお安全かと思ったが、件の友人に「アナログで書かれたファクスであろうと、伝送の過程でデジタル化されるから意味ないですよ。ファクスはむき出しで送られるから周囲の人にはだれでも見られるし、風が吹けば飛んでしまいますよ」と言われてしまった。

そのとき聞いたのだが、グーグルはストリートビューに写っている建物や電柱の番地を読み取って、ユーザーにさらなる便宜を提供しようとしているが、さまざまな書体の文字を読み取る制度がすでに95%になっているらしい。デザイン的に工夫されて、これを読み取れることで人間とマシンを区別するためのCAPCHAをコンピュータが読み取る精度も向上し、手書きのややこしい文字でもマシンはどんどん解読できるようになっている。手書きファクスなら安全かと言うと、それもおぼつかない。

彼になるべく情報が読み取られない方法は何だろうかと聞くと、あえて勧めるとなると、(1)封書を郵便で送る、(2)本文はメールで送って文書のパスワードは電話で伝える、あるいは重要な情報は単独では意味をなさないように分割してそれぞれ別アカウントまたは別通信手段で送る、というような分割作戦ではないか、と言った。

封書には一応「信書の秘密」が憲法上も保障されている。通信業者を念頭に罰則も定められているが、世間一般に他人宛ての封書は勝手に読まないという暗黙の了解があると考えていいだろう。

インターネットで簡単にメールが送れるとき、ワープロ書きにしろ、手書きにしろ、それを封書で送るのは、たしかに面倒である。同じ文書を別ルートで送る手続きも煩わしい。PGP利用はいよいよ面倒である。口頭で伝えるには、直接会いに行かなくてはいけない。

しかし、プライバシーを真剣に守ろうとすれば、便利さにかまけているわけにはいかないのが現状である。それなりの努力が不可欠なのである。というわけで、サイバーリテラシー・プリンシプル(7)は「面倒な手続きをあえて踏む」としよう。

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