フィリピンがマッチした理由
タイは日本からの企業の殺到により、もう工業団地の家賃や地代が高騰しており、また人手不足の深刻化により賃金も高騰し、それゆえいい人材を求めにくいこと。それに対して、フィリピンは英語が通じること。失業率が高く人材が求めやすいこと。日本での取引先が工場展開をしていること。手頃な貸し工場がみつかったこと、などにより決断した。
また現地駐在員として英語のできる人間を新規採用し、日本の工場でトレーニングした。決定から半年後に工場を設営し、日本で使っていた簡単な機械類を運び込んだ。従業員を募集し、三人ほど雇い、駐在員と田中社長で現地工場を立ち上げた。日本ですでに取引のある会社への挨拶。会社案内をもっての未知の会社訪問。日本国内と異なり、どの会社も最初は苦労しているので新規参入にフレンドリーだ。とはいえすぐには仕事がないので、日本の一番易しい仕事をもってきて(つまり日本本社工場の下請け)、従業員に教えた。
田中社長は、各種の書類手続き(日本人向けのコンサルタントもいる)などもあり、立ち上げ時はフィリピン滞在が長かったが、いまでは月に一週間出張する程度である。筆者も2013年の夏の終わりに現地に訪ねたが、「今後、拡大するにしても工場が広すぎるのではないか」と思える大きさにびっくりして聞いてみたら、「フィリピンでもよい場所はどんどん塞がってしまっており、早く決める以外になかった」とのことである。