さらに深刻なのは「代行割れ」に陥っているケースだ。中小企業を中心とした厚生年金基金では、企業年金の3階部分だけではなく、公的年金である2階部分の厚生年金を代行して積み立てる仕組みになっている。

ところが、「AIJ問題」で発覚したように、運用の失敗や運用利回りの低迷で、企業年金の部分だけでなく厚生年金の部分まで積み立て不足の代行割れ基金が多い。厚生労働省によると、2012年3月末現在、577ある厚生年金基金のうち、287の基金で代行割れが生じている。

代行割れ基金の企業が倒産した場合はどうなるのか。代行割れでは3階部分の企業年金は当然もらえないが、2階部分の厚生年金は公的年金なので減額はされない。問題は代行割れの穴埋めを誰がするかだ。いまある基金の大半は地域の中小の同業社で構成されている。不足分は原則として同業社が負担することになるが、多くの企業にその余裕はない。

国は、厚生年金基金制度を廃止する方針を示し、特例的な解散ルールを定めて、代行割れ基金の「解散」を促している。具体的には特例として返還額を若干軽減し、最長15年で分割返還できるようにしている。

私も厚生年金本体の財政を考えると基金の廃止には賛成の立場だ。現行の5年の特例期間の延長や返還額のさらなる軽減措置の実施により、円滑に解散を選択できる環境整備を早急に進めるべきだろう。そのうえで中小企業向けの企業年金として、確定拠出型の普及などを急ぎたい。

自分の企業年金はどのようなタイプなのか。この機会にぜひ確認してもらいたい。

横浜国立大学教授 山口 修
1950年生まれ。72年大阪大学理学部卒、住友信託銀行入社。年金運用部長、年金研究センター研究理事などを歴任。2004年より現職。著書に『確定拠出年金のすべて』など。
(横浜国立大学教授 山口 修 構成=山下知志 撮影=プレジデント編集部)
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