子どもたちの食の貧困が叫ばれて久しいが、足立区では区長の公約で7年前にスタートした給食改革が成功し、区のマイナスイメージを変えるまでになりつつある現場ではどんな苦労があったのか。その取り組みを追った。

※第1回はこちら(http://president.jp/articles/-/12960)

教員との交流で協力が生まれた

おいしい給食の効果が出ている学校として取材に出向いたのは、足立区立梅島第二小学校。区内ではここ数年で高層マンションが増え、核家族化が進んでいるが、梅二小は70年の歴史を持つ伝統校。両親や祖父母が卒業生という三世代同居家庭や同じ学校に親類が通う家庭も多い。

梅島第二小学校 栄養士 
今泉 久美子

この日の給食は、グリーンピースごはん、さわらのバーベキューソース、カリカリポテトサラダ、かきたま汁、牛乳という献立。教室に入るなり、子どもたちが元気な声で「カリカリポテトサラダは人気メニューだよ。野菜大好き」「グリーンピースは嫌いだけど、給食のグリーンピースは食べられる」「かきたま汁が美味しいよ」と口々に教えてくれる。

学校の栄養士・今泉久美子さんによると、グリーンピースが苦手な子どもも多いため、小学2年生の生活科の授業でさやむきをする。「今朝、2年生が一生懸命さやむきをした豆だよ」と伝えることで、手をつける児童もいるという。グリーンピースの香りが苦手な児童のために、ご飯を炊き上げた後にグリーンピースを交ぜるといった工夫もしている。

校長会の学校給食部の担当校長でもある同校の中田眞由美校長は、おいしい給食事業に対し、「教員と栄養士の一体化が功を奏した」と話す。

梅島第二小学校 校長 
中田 眞由美

「栄養士は本来、事務職です。それでも本校の今泉は職員室にいて、児童集会などにも出てくれています。そういう意味では教員でもあるのです。職員室でほかの教員とコミュニケーションをとりながら、教科等で食育の時間を設けたり、給食時には職員とは違った視点で子どもの様子、お代わりの仕方、残菜の量などを毎日見てくれたりしています。児童たちも『今泉先生』と呼んで慕っています」

足立区の「おいしい給食」事業では、特別な予算をつけたわけではない。それでも給食の味がグンと上がり、残菜率が減ったのは、現場で支えている今泉さんら栄養士のがんばりが大きい。