いっこうに起きない老父に必死で水を飲ませる
「朝だよ。血圧測るよ」
大声で呼びかけても反応がありません。まだ薬が効いているのだろうと思い、無理に起こすことはせず血圧と体温を測りました。どちらも平常値。目が覚めたところで朝食を食べてもらおうと思いました。
その後は1時間おきぐらいに様子を見に行きましたが、一向に目を覚ましません。そのまま正午になったので、無理やりにでも起こしてお昼ご飯を食べてもらおうとしたのですが、からだを揺すっても眠り続けています。
さすがに心配になり、訪問看護師さんの緊急連絡用の携帯に電話をし指示を仰ぐことにしました。
看護師さんに服用した睡眠薬の名前を伝えると、こう言いました。
「それほど強い薬ではなく、健康な人ならひと晩で抜けるものですが、高齢でからだが弱っている人の場合は2~3日、からだに残り、意識が朦朧とすることがあります。とにかく今は水を多めに飲んでもらい、薬を出すようにしてください」
「なんなら今日伺いましょうか」とも言ってくれましたが、水を飲ませることぐらいなら私にもできると思い、お礼を言って断りました。
なんとか父を起こして水を飲ませなければなりません。
からだを揺すって「水を飲もう」と呼びかけ続けると、かすかにうなづきました。が、ベッドの背を立てて水の入ったカップを口に持って行っても、父は飲もうとしません。飲み方が解らなくなってしまっているようなのです。
ならば、とペットボトルにストローを差し込み、吸ってもらうことにしました。ストローを口に差し込んでも口は空いたままで、ストローをくわえることができないのです。仕方なく、口を手で閉じ「チューチューして」というと、やっと水を飲み始めました。
睡眠薬を1錠飲んだだけで、そんな状態になってしまった父には愕然としました。