エネルギーと安全保障は一体だ
昨年度末、韓国に敗れたUAEにおける原発の受注案件。韓国は考えらない安い価格を提示し、原発の60年間メンテナンスを保証するなど、荒唐無稽とも思える条件での落札だった。
こうした世界の競争相手と、日本は戦っていくのだ。原子力の受注競争で日本が技術力以外に求められているものがあるとすれば、それは国の威信をかける覚悟があるかどうかなのではないだろうか。
戦後の一貫し続ける“アメリカ頼み”も変わらない。米国の原子力行政に強い影響力を持つダン・ポネマン上院議員がモンゴルを訪れたのは今から約1カ月前で、その狙いはモンゴルに眠る地下資源「ウラン」、原発に不可欠な資源である。
当初、米国は、モンゴル開発は長期的な案件として構えていたが、尖閣諸島での中国漁船の拿捕問題に端を発した中国政府の「レアアース」輸出禁止措置を目の当たりにし、モンゴル開発への取り組み姿勢を一変させた。「安全保障上、看過できない」(米国政府関係者)として、ウランの確保とともに、レアアースの確保を急ぎ始めた。10月26日には、米ワシントンでモンゴル開発に意欲を見せる東芝・WHの関係者を呼んで意見交換が行われ、仙谷、前田にも伝えられている。
今回、ベトナムとのレアアース共同開発にも米国の対中国戦略が影を落とす。一見、分野が違うようだが、当初TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)で、日本の参加を拒否していた米国が態度を一変させた、対中国封じ込めの思惑がある。米国に担保された安全保障なしで、日本の原子力産業が成り立たないのも現実だ。
市川眞一クレディ・スイス証券チーフ・マーケット・ストラテジストはいう。
「資源エネルギー省をつくり、外交を含めた日本のエネルギー安全保障策を練る。そのうえで、原発が産業ベースで利益を生むにはどうすべきか、考えていくべき」
安全保障と原子力の2点セットをどう扱うか、今こそ日本は問われている。(文中敬称略)