具体例でシミュレーションしよう。

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ゆとりBさんのケース

現在58歳、年収手取り600万円の会社員Bさんのケース。1歳年上の妻は専業主婦。子どもは独立している。貯蓄は1500万円あり、退職金は1300万円もらえる。定年退職後は65歳まで年収300万円(月25万円)の嘱託として残ることができる。65歳以降は年金の280万円(月23万円)で生活することになる。Bさん夫婦は老後の生活費を月額25万円と見積もっている。80歳まで毎年100万円かけて16回海外旅行へ行き、自宅のリフォームを2回、総額400万円かけて行い、2人の子どもには結婚時に援助金として200万円ずつ渡すつもりでいる。

貯蓄と退職金の合計が2800万円なので安楽に暮らせると思っていたら、77歳で赤字に転落することがわかった。

FPの横川由理さんのアドバイスは「生活費25万円を22万円に減らし、年100万円の旅行費を70万円に抑えること」。毎月3万円節約すれば年間で36万円、15年間で540万円、旅行費を30万円減額すると16回分で480万円浮くことになり、赤字転落の時期を87歳まで先延ばしできる。赤字を避けたいのであれば、退職金を定期預金や安全性の高い債券で運用しよう。もし将来金利が上昇して1%で運用できる環境になれば86歳の時点で500万円のお金が残ることになり赤字転落を避けられる。

嘱託で残れるBさんはともかく、誰でも60歳から65歳までの5年間、年収300万円の仕事が見つかるものだろうか。最も確実な方法は会社を辞めずに再雇用してもらうこと。かつての部下の下で働くこともいとわない気構えが必要だ。どうしても残れないときは中高齢者専門の派遣会社を通じて仕事を紹介してもらおう。経理や財務に深い知識があったり、電気主任技術者、ビル管理技術者、社会保険労務士などの資格があれば有利になる。まったく違う職種でも新入社員に戻ったつもりで飛び込んでみるのも楽しそうだ。5年間働けばいいのだから。