経済ジャーナリストの岩崎博充さんの見方はもっと厳しい。公的年金をあてにせず「自助努力で生活するしかない」という。

「日本が新しい成長戦略を描くことができれば現役世代だって貯金を増やせるのですが、それは恐らく無理ですよね。一方で日本の公的債務は政府保証債務を合計すると1003兆円に達しています。これをいったい誰がどうやって返済するのでしょう」

政府は成長戦略で掲げた経済成長率の目標を名目で3%、実質で2%としている。もし本当に目標を実現しようとすると「大変なことになる」と岩崎さんは警告する。「金利が1%上がると、返済するお金は25%増える」からだ。景気が良くならなければ現役世代が貯蓄を増やせない。景気が良くなって金利が上昇すると国の財政破綻が早まる。そんなジレンマの中に、現役世代は置かれている。

ではどうしたらいいのか。岩崎さんは「ギリシャを見習うしかない」という。

「ギリシャの人々は、国が頼りにならないので自分でなんとかするしかないと考えている。日本も一部の優良企業は企業年金などで公的年金の減少分を補填できるかもしれませんが、大多数の国民は時代が変わっても体制が変わっても円の価値が変わっても、世界で通用する資産を蓄えて自衛するしかないと思います」

岩崎さんのアドバイスは、まずポートフォリオの中の通貨を分散するというもの。円資産を3分の1程度に抑え、米ドルをはじめ成長力のある国の外貨をミックスさせて増やしていく。通貨だけでなく、実物資産も組み込む。普遍的な価値のある純金や、家賃収入が期待できる不動産がいいだろう。それも場当たり的ではなく「60代になったときにどういう生活をしたいのかということをイメージして、それを実現するシナリオを作り、シナリオに沿って40代から動き始めることが重要です」(岩崎さん)。

ファイナンシャルプランナー 
横川由理

FPエージェンシー代表。お金の知識を広めることをライフワークとし、さまざまな講座や執筆で活躍中。著書に『老後にいくら必要か?』など。

経済アナリスト 
森永卓郎

1957年生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、経済企画庁などを経て現在、獨協大学経済学部教授。『庶民は知らないデフレの真実』など著書多数。

経済ジャーナリスト 
岩崎博充 

1952年生まれ。武蔵大学卒業後、雑誌編集者等を経て独立。主に経済、金融、国際問題を中心に執筆。著書に『老後破綻』『老後のお金の新常識』などがある。
(永井 浩=撮影)
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