「ゆとり老後」のためには6000万円の貯蓄が必要──。介護のために、80代以降にも貯金を残したい。現役時代からの生活費の見直しとキャリアの積み方に、老後の「ゆたかさ」と「安心」がかかっている。

俺の老後は大丈夫なのか。定年退職後の再就職はできるのか、年金だけで生活ができるのか……。現役世代は老後の生活に強い不安を抱いている。

脳科学者の茂木健一郎さんによると「人間は、自分を脅かすものの正体がわからない時に、最も不安を感じる」(「クオリア日記」)という。

ここではまず不安を緩和するために、再就職、年金、家計プランに焦点を絞って老後の生活をざっとイメージすることから始めよう。

再就職については法的な後押しが行われている。厚生労働省は65歳まで働けるよう、60歳定年後の継続雇用制度などの導入を企業に義務付けた。

FPの横川由理さんは「90歳まで生きることを前提として考えると、60歳で仕事を辞めて無収入期間をつくってしまうと、この間に貯蓄を使い果たすことになり、不安を抱えたまま生活することになるでしょう。やはり65歳まで働いて収入を得ることを前提に老後を考えたほうがいい」とアドバイスする。

厚生労働省の「簡易生命表」によると2011年の日本人の平均寿命は男性が79.44歳、女性が85.90歳だった。しかし60歳まで生きた人の平均寿命でみると男性は83歳、女性は88歳まで生きることになり、横川さんの90歳プランが現実味を帯びる。