なぜ強大な黒船に勝つことができたのか

しかし、先方がその合弁につけた条件が、どうしても納得いくものではありません。そして検討のうえ、決心した。自前で対抗する。ヤフーオークションで強大な黒船を迎え撃とう、と。

結果、アメリカではボロ負けしたヤフーが、日本では完全な勝利を収めました。名うての黒船も、わがヤフオクには太刀打ちできなかった。2002年3月、ヤフオクに会員数がまったく追いつく気配がないなどの理由で、イーベイは日本から完全撤退しました。

カリフォルニア州サンノゼにある、米オンライン競売最大手イーベイ本社。(時事通信フォト=写真)

当時のイーベイジャパンの担当者は、「サイト自体は向上していたが、著しい業績の改善が見込めなかったこと」や「上場企業のイーベイ(アメリカ)としては、よりリターンの高い投資を行う必要があったこと」を撤退の理由として挙げました。アメリカではトップ企業のイーベイも日本ではやられっぱなし。打つ手がほとんどなく、思うように儲けが出せなかったわけです。

それだけヤフオクの知名度は日本国内で絶対的だった。黒船が到来しても、会員がフラフラとそちらに流れる現象がなかったということなのでしょう。

ネットオークションはその仕組み上、売り手は客の多い場所へ集中します。ネットオークションでモノを売る場合、買い手の多い環境で売ることが儲けを生み出す近道ですから、売り手は小さなオークションサイトには見向きもしない。そんな好循環に助けられ、世界でその名をとどろかす黒船を日本から追い出すことができたのです。

今、振り返っても、ヤフオクがイーベイに勝利した、この一件は我々にとってとても重要だったと思います。あるジャンルで「圧倒的ナンバーワン」になって初めて、本質的な存在理由を獲得することができる。つくづくそう思うのです。とりわけ情報産業における「ナンバーワン」というポジションの重みは相当なもの。2番では敗北と同じです。1番になれば自然とゆとりが生まれ、新しい技術開発にチャレンジし、ライバルにはないアイデアを実行に移せます。すると、その余裕のおかげで、お客様にも一層丁寧に接することができる。そうして本物のサービス業が出来上がっていくのだと思います。