さらに最新の定義では、不眠症状があるだけでは「不眠症」とは言えない。不眠症状に加えて、日中眠くて仕事にならないとかイライラするといった、QOL(生活の質)の低下があって初めて「不眠症」と診断されるのだ。この定義によれば、本当の不眠症は10%程度だという。諸外国の平均は6~7%なので、やや高いとは言えるが、特に日本人だけに不眠症が多いわけではないようだ。

「ただ不眠症とは異なりますが、日本人の睡眠不足が国際的に見てかなり深刻なのは確かです」

睡眠不足によって高血圧、肥満、糖尿病のリスクが高まるなど、健康に与える悪影響が明らかになってきた。また日中の眠気が原因で、仕事の効率が落ちたり、重大な事故が起こることもある。このような睡眠不足に起因する日本国内の経済損失は、なんと年間3兆5000億円と試算されている。やはり睡眠をおろそかにしてはいけないのだ。

そこで気になるのが、「自分の睡眠は大丈夫か」だが、三島氏は言う。

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30歳を超えると平均睡眠時間は7時間を切る

「『理想的な睡眠時間は何時間だと思いますか』と聞くと、ほとんどの方が8時間と答えます。でもこれにはまったく根拠がないのです」

なぜなら加齢とともに、必要な睡眠時間は減っていくからだ。8時間ぐっすり眠れるのはせいぜい中学生くらいまで。30代ですでに7時間を切るし、70歳近くなれば6時間前後が普通になる。夜中に目が覚める「中途覚醒」も当たり前に起こるようになる。しかも必要な睡眠時間は個人差が大きいため、誰もが1日8時間以上眠らなければいけないというのは間違いなのだ。

「十分な睡眠をとっているかどうかは、時間の長短ではなく、昼間の眠気や倦怠感のあるなしで判断すべきです」