「理解活動」は反社会的か

06年12月13日に公表されたタウンミーティング調査委員会報告書は、国主催の討論の場において、主催者側が特定の参加予定者に特定の内容の発言の依頼をすることを厳に禁止すべきであるとした。同報告書により、そのような行為は「世論誘導」に当たり許されないとの「規範」が明確に示されたと見るべきであり、この問題を境に、国や、それと同等の立場に立った場合の地方自治体にとっても、この規範は重要な意味を持つようになったと考えるべきであろう。

原発の説明会における主催者である行政側が、電力会社社員への参加要請や発言の依頼が今回明らかになりつつある。この行為をどのように評価すべきかに関しては、小泉内閣のタウンミーティング問題の表面化や、その調査委員会報告書の公表の前か後かで行為の評価は大きく異なってくるのだ。

電力会社側の対応に関しても同様である。福島原発事故以前は、原発が安全であることの「理解活動」の延長上で、説明会において原発への賛成意見を確保しようとする行動も、明らかに反社会的とまでは言えないものであった。 しかし、それが、タウンミーティング調査委員会報告書により主催者による「世論誘導」的行為の不当性が指摘された後の出来事で、電力会社側の独自の判断ではなく、主催者である行政の要請に応じて行われたものであれば、社会規範に反する行為への協力という面で問題があると言わざるをえない。

重要なことは、過去の説明会などで行われていたことの真相を明らかにし、それを踏まえて、今後、原発問題について国民が公正な判断を行う基盤をつくっていくことである。

※すべて雑誌掲載当時

(原 貴彦=撮影 PANA=写真)