高齢社会白書によると、高齢者の事故は77%もが住宅内で起きている。老親を守るため、家の中の危険ポイントをチェック&対策しておきたい。

日本の住宅は高齢者に優しくない

日本人には年を取って足腰が弱ってもわが家に住み続けたいと願う人が多い。平成25年版の高齢社会白書によれば、現在のまま、あるいは改装のうえで自宅に留まりたいと考える人の割合は6割を超えている。

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体が弱っても「自宅に住み続けたい」が6割以上

一方で日本の住宅の構造は高齢者にとって使いにくく、事故を起こしやすいと言われる。具体的には、玄関の上がり框かまちに代表されるように段差が多く、廊下や階段の幅が狭い。和式便所や畳での就寝といった、立ったり座ったりの動作が多い。住戸内の温度差が大きい。生活の洋式化に伴い室内にモノが増え、介護や移動の邪魔になる。高齢者が一人でも安全に暮らすためには、こうした問題をできるだけ取り除くことが必要である。

介護認定を受けていれば、手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修に、20万円を上限に費用の9割が支給されるが、それ以外は自費で安全を確保することになる。といってもポイントを押さえれば、それほどの費用をかけずにできることも多い。

たとえば転倒防止を考えたとき、最初にやるべきことは掃除である。住戸内を片付けて足元にモノを置かないようにする、つまずかないようにコード類を整理する、照明器具の埃を払って明るくする。これだけでも危険は軽減する。古い家では玄関、階段、廊下などが暗いので、電球を替えるだけでも効果は大きい。その際、電球交換の手間が少なくてすむよう、LEDにしてしまうのもいい。家具の配置を見直し、移動の邪魔にならないようにすることも大事だ。

転倒のきっかけとなる段差の解消や、転落防止には手頃な商品が数多く販売されている。階段にはノンスリップテープと呼ばれる滑り止めを貼るのが一般的だが、一般的な一戸建てなら数千円程度で足りる。最近は夜間、光を発する蓄光タイプがより安全と人気だ。

玄関の上がり框の段差解消には式台が安価で便利。階段式や、ベンチとしても使えるものなど多種あり、1万円からで手に入る。

転倒防止には手すりが有効だが、取り付けたい位置に下地があるか、壁材、建物の強度に合わせて設置する必要があるため、素人には難しい。自治体の相談窓口を利用するなど、プロの手を借りるのが現実的だ。ただ、最近は床置き型や吸盤式のものなど、工事不要の商品も出ている。