急激な温度差が死の危険を招く

転倒防止に加え、考えたいのが住戸内の温度差解消。一戸建てや古いマンションでありがちな、暖かい居室から寒いトイレや風呂場に移ったときの急激な温度変化は、体内の血管の急激な収縮と、血圧や脈拍の変動を引き起こし、それが脳卒中や心筋梗塞などにつながると言われる。特に寒冷地に住む75歳以上の高齢者は要注意だ。

解決策としてはトイレや脱衣所などに、体への負担が少ない輻射熱利用の薄型ヒーターなどを置く。人感センサーを備えたタイプなら、電気代も少なくてすむ。もう少し予算があれば浴室暖房乾燥換気扇を設置する手もある。これは換気扇に暖房、衣類乾燥、涼風機能などが付いたもので、数万円から10万円程度で設置できる。

住戸内が寒いと運動量が減り、寝たきりを引き起こすロコモティブシンドローム(筋肉、骨、関節などの運動器に障害が起き、歩行や日常生活に支障をきたす状態)になりやすく、精神的に落ち込みやすくもなる。住戸内全体を暖かく保つようにもしたい。

キッチンは、自分で調理している場合には安全面を考えIH利用を。使い慣れたガスがいいという場合には、鍋のから炊きなどによる過熱を防ぐサーモスタット機能や、消し忘れ防止タイマーが付いた製品を選ぼう。

キッチン、水回りの改修はお金がかかるが、東京都の一部自治体では、要介護、要支援に該当していなくても、浴槽、流し、洗面台などを改修する際に助成が受けられることもある。

離れて暮らしているなら利用したいのが、急増中の見守りサービス。日本郵便やガス事業者、警備会社など様々な業種が参入しており、利用料金は月額1000円前後。これだけの出費で親の安全が確保できるなら安いだろう。

最近の研究では高齢者の知力、体力、人格を総合した老化度は疾病等がない限り保たれ続け、死の直前になって急速に低下するとされる。今は健康だからと思っていても、いつ、そのタイミングが来るかはわからない。親が健康なうちに備えておきたいものだ。