――今回の危機は、「100年に一度の危機」と言われています。『市場の変相』で想定した展開と比べ、どう評価しますか。
本書で取り上げた中心テーマは「100年に一度の大転換」です。国の力関係が逆転したり、巨額の富が移転したりするなどで大転換が起きます。ところが、大転換の見極めは難しく、必然的に「市場の事故」や「政策ミス」を誘発します。結果として、大転換によって出現する「新たな行き先」にたどり着くまで、険しい旅路を歩まなければなりません。昨年以降に起きた市場の大混乱は文字通り険しい旅路であったわけで、本書の中心テーマと一致しています。
ただし、過小評価していたことが一つあります。昨年9月15日のリーマン破綻です。いくつかの「政策ミス」が起きると、旅の途中で想像を絶するほどの危機に遭遇します。政策当局はリーマンの救済を見送りました。それが発端になって危機が雪崩を打って増幅し、国際的な決済システムが麻痺したのです。
本書の中では、大手金融機関がつぶれる事態は予期していましたが、国際決済システムが機能不全に陥る事態は想定できませんでした。昨年第4四半期(9~12月)、リーマン破綻の余波で市場が崩壊し、経済活動が突如として全面停止しました。正直なところ、私にとって想像を超える異常事態でした。