【田原】それは面白い。日本の企業は80年代まで質がよかったけど、90年代になって韓国やほかの国が追いついてきた。そのとき本当は付加価値を生み出してほかがやっていない領域で勝負しなきゃいけなかったけど、日本企業は新興企業に勝とうとして価格競争してしまった。ソニーもパナソニックも、みんなそれで失敗した。

【前澤】金儲けとか勝ち負けに重点を置かないほうがいいと思うんですよね。僕の幸せの大部分は、人の幸せが占めています。じゃあ、どうやってまわりの従業員やスタッフ、その先のお客様や取引先、株主を楽しませたり驚かせることができるのか。それを考えてやってきたら結果的に儲かっていたという感覚なので、これからもそれでやっていきたいなと。

【田原】前澤さんは嫌がるかもしれないけど、稲盛和夫さんが言う「利他」に通じるところがある。とても興味深いです。これからも注目しています。

田原総一朗が見た前澤友作の素顔

ZOZOTOWNが人気だ。楽天やヤフーも服を売っているが、前澤さんによると、ほかにもいろいろなショップがあって目当ての商品を探しにくいという。一方、ZOZOTOWNはファッションに特化した専門店。最初からファションに興味のある人向けに設計されていることが強みになっている。

1日6時間労働制の話も興味深かった。一般的な1日8時間労働だと、子育て中の女性は育児と仕事の両立が難しく、それが少子化の一因にもなっていた。

しかし、1日6時間労働ならグッと両立しやすくなる。もちろん男性も育児を担いやすくなるだろう。今後、同社と同じ制度を取り入れる会社は増えるのではないかと思われる。幕張に本社を置くのもユニークだ。このようなところに先鞭をつけた前澤さんの経営者としてのセンスはすごいと思う。

スタートトゥデイ社長 前澤友作
1975年、千葉県生まれ。94年早稲田実業高等学校卒。95年輸入レコード・CDの通販ビジネスを開始する。98年有限会社スタートトゥデイを設立。2000年同社を株式会社化。03年イラク戦争に反対し、「ノー・ウォー・オン・イラク」のTシャツを製作し、売上金の全額を寄付し、話題を呼んだ。07年同社を東証マザーズに上場、12年同社を東証一部に上場させる。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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