約22万人の「農協」は農家のために必要か

【弘兼】日本の農業の論点の一つが、農協(JA)の是非です。農協は農業者の協同組合として、安定した価格で農作物を買い上げるという役割を果たしてきた。ところがその一方で、農協を通して出荷すると、生産者がどれだけこだわって農作物をつくっても、特定の規格に沿って、ほかの生産者の農作物と混ぜられてしまう。「うちの米は美味しいぞ」と思っていても、まぜこぜにされて売られたら、やる気が出ません。だから、やる気のある生産者ほど農協を通さないようになった。農協の全国組織である「JA全農」のまとめをみると、12年産の米の集荷率は45%。つまり55%が農協を通さずに出荷されており、農協の集荷率は年々下がっています。

【新浪】 「まだ4割は農協を通されている」というべきかもしれません。4割のシェアがありますから、価格決定力がある。農協の各支部が銘柄によって価格を一律に決定します。その価格は市場より高いので、必ず売れ残ります。

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売上高100万円以下が約6割

【弘兼】その売れ残りを国が「備蓄米」として買い上げるわけですね。農協の失策を、税金で買い支える仕組みが続いてきた。いま農業就業人口は約240万人で、そのうち売上高が1000万円を超える農家は8%程度です。これに対し、農協には約22万人の職員がいる。農業は滅びるのに農協は栄えるという、まずい構造になっています。もう農協は不要ですか?

【新浪】そうとは言い切れません。自社の話で恐縮ですが、大学の構内にローソンが出店したんですよ。場所は大学生協の隣。すると、大学生協の品揃えや対応がよくなったそうです。

【弘兼】それまで市場を独占していたのが、競争にさらされて変化せざるをえなくなったわけですね。

【新浪】そういうことです。競争のないところでは、イノベーションは生まれません。農協のライバルをつくることが重要です。大規模な生産をする農業生産法人などが出てくれば、農協は絶対によくなると思います。