同じことが、19世紀のイギリスの経済学者・思想家であるジョン・スチュアート・ミル(1806~73)についてもいえる。彼の場合は、まずギリシャ語からはじめられたが、3歳から習いはじめている。
ミルは父親がつくった、ギリシャ語の単語に英語の意味が記された単語カードをひたすら覚えるというやり方を取った。そして、簡単な文法を習ってから『イソップ寓話集』の訳読に進む。それ以後、父の指示に従ってギリシャの古典を次々と読むことになる。こうしてミルは、7歳のときにはプラトンの対話篇をも読むことができるようになったという。
父親による教育は続き、ミルが8歳になるとラテン語の学習もはじまった。語学のほかにも幾何学、代数、微分学などの高等数学、歴史、論理学、哲学、さらには経済学におよんだ。13歳でこれらの教育が終了したときには、彼はケンブリッジやオックスフォードの大学生と同等か、それ以上の知識を持つにいたっていた。
この2人の例から、どんな教訓を得ることができるか。それは親の努力次第でいかようにも子の才能を伸ばせられる、幼年期の子供には限りない学習能力があるということだ。
木原武一
1941年東京生まれ。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。著書に『天才の勉強術』『大人のための偉人伝(正・続)』『父親の研究』『あの偉人たちを育てた子供時代の習慣』『子供を知的に育てる親の態度』。
1941年東京生まれ。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。著書に『天才の勉強術』『大人のための偉人伝(正・続)』『父親の研究』『あの偉人たちを育てた子供時代の習慣』『子供を知的に育てる親の態度』。
(岡村繁雄=構成 amanaimages=写真)