「悪銭身につかず」ということわざは、本当に正しいのだろうか。茂木健一郎氏は「株式投資で儲けた人は『自分には投資の才能がある』などと勘違いしやすい。そうした『認知バイアス』は、浪費を招くことがある」という――。
「自分は投資の才能があるという」驕りはお金に嫌われる
新NISAが始まってから、投資に関心を持つ人が増えている。そんな中、8月上旬に日経平均株価がブラックマンデーを超える大幅な下落をして、その後も乱高下するなど、不確実性に備える必要が強く感じられるようになっている。
投資は、資本主義社会を回すうえで大切なことである。「この会社は成長する」と信じて株式を買ったり、さまざまな支援をすることで社会的なリソースが集まり、結果として会社が成長し経済も回っていく。
株式投資で言えば、自分が好きだったり成長すると信じる会社・分野に投資して、中長期的に保有するいわゆる「ガチホ」(ガチ〈本気〉でホールド〈保有〉)のやり方は、投資の本質に沿っているし、そのような安定株主がいることは会社にとってもありがたいことだろう。
その一方で、こまめに売買を繰り返して利ざやを稼ぐといった戦略をとっている方もいる。そのような方法で利益を上げることももちろん一つのやり方だし、ある程度のボリュームの売買がないと市場も成り立たない。
一人ひとりが、利益を最大化しようとして知恵を尽くす結果、お金などのリソースが届くべきところに振り向けられる。そのような「資源の最適配分」を実現するためには、ガチホのような安定した株式投資も、売買を繰り返す投機的な動きも、どちらも必要である。
とは言うものの、特に細かく売買を重ねるやり方は、時系列データの解析などについてよほどの卓越したノウハウがないと、素人が手を出すのは難しい側面もある。株を長期で保有するやり方に比べて、良い結果をもたらさないことが多いのは当然だろう。
ノーベル経済学賞受賞者たちが運用していた「ロングターム・キャピタル・マネジメント」というファンドがかつて大幅な損失を出したように、市場がどう変化するかを予測することは、専門家でも難しい側面がある。誰も予期していない「ブラックスワン」のイベントが発生し、優秀な投資家でもダメージを受ける可能性があるのだ。
投資や投機をするということは、脳の仕組みから言えば、不確実性に向き合うということ。確実なことなど、何もない。それでも、人間はさまざまな経験則や、都市伝説、時には陰謀論さえ繰り出して、本来予測不可能なものを予測可能にしようとする。
結果として、とりわけ短期的な売買を繰り返す投機の世界は、さまざまな認知バイアスに満ちている。しばしば、「デイトレーダーとしてたくさんお金を稼いでいる」というようなケースが喧伝され、「じゃあ自分も」と思う人が続出したりするが、確実に儲ける方法などあるはずがない。
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