手柄を横取りされないためには?

信頼していた人に裏切られ、苦労して築き上げたものを失ってしまった。皆さんはそんな経験があるでしょうか。残念ながらビジネスの世界では珍しいことではなく、新商品のアイデアを同僚に奪われたり、自分が事業を成長させたのに手柄を上司に横取りされたといった話はよく耳にします。そのような人間関係のトラブルは、会社員のみならず起業家にも起こりえます。アメリカのIT企業を中心に、創業者が会社を大きくした後に追い出されたという事例も存在します。

優秀な人たちが起業や新規事業開発によって新しいものをどんどん生み出していくことは、日本経済を活性化するためにも非常に大事です。しかしせっかくのチャレンジも、人間関係のトラブルでつまずいたら、道半ばで終わってしまうかもしれない。それではあまりにももったいないと感じます。

では身近な人の裏切りに遭わないためにはどうすればいいか。それを知る手掛かりとして、SF小説の古典的名作であるロバート・A・ハインラインの『夏への扉』をご紹介します。

本作が出版されたのは1957年ですが、小説の第一幕は70年12月3日に設定されています。現在の私たちにとっては過去ですが、著者のハインラインは近未来を舞台に物語を描いたことになります。

このとき、主人公のダンは人生のどん底にいました。技術者である彼は数年前に親友のマイルズと会社を立ち上げ、ダンが発明した掃除ロボットは人気商品になりました。ダンは開発に夢中だったので、会社の経営はマイルズに任せ、さらにベルという女性をタイピスト兼会計係として雇います。まもなくダンはベルと婚約し、会社の株の一部を彼女に持たせますが、実はベルとマイルズは裏で通じていて、二人で共謀きょうぼうして会社を乗っ取ってしまいます。しかもダンは技術者にとって命とも言える大切な発明の特許権まで騙だまし取られたのです。心が痛くなるような、なんとも切ない展開です。

婚約者と親友に裏切られ、すべてを失ったダンは、自分の気持ちをこう表現しています。

「ぼくの心には冬が住まって、ぼくはひたすら夏への扉を探し求めていたのである」

真冬のように凍いてつく心を抱えたダンは、夏へとつながる扉を開けて、今の苦悩から自分を解放してくれる新しい世界へ行きたいと望んだのです。その手段に選んだのが、冷凍睡眠コールドスリープでした。

彼は生命保険会社が提供するサービスを利用し、30年間の冷凍睡眠に入ります。彼が目覚めたのは西暦2000年。ところがこの世界でも、ダンは自分の発明に関する不可解な謎に直面し、真相を突き止めるためにある行動に出るのです。

親しき仲でも全幅の信頼は危険

その先の展開はタイムトラベルものとして見事なので、ぜひ皆さんにもお読みいただくとして、ここからは今回のテーマである「『身近な人の裏切り』を未然に防ぐスマートな方法」を考えてみましょう。

(構成=塚田有香 撮影=川しまゆうこ イラストレーション=米山夏子)

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