行動――メモのとり方、うなずくタイミングでわかること
調査結果では、出世を見極めるポイントで「仕事の進め方」が圧倒的な1位を占めた。企業が生き残るためには個人の仕事の能力そのものにフォーカスせざるをえない時代を反映しているのだろう。
昔の日本的大企業では、社内の空気を鋭敏に読み、男性社員間の暗黙の掟を厳守し、失敗を最小限に抑える、といった戦術が出世競争には有効だった。10年後の組織図を推測し、「次の次の社長」に結婚式の仲人を依頼するといったことを、そつなくできる人が偉くなっていた。しかし現在は、優良企業ほどそのような戦術は通用しなくなっている。前例を忠実に踏襲するのではなく、環境変化に適応する能力こそが求められているからだ。
また、異動のパターンで出世の見込みが予想できた時代もあったが、今は本流と思われていたビジネスが縮小し、亜流だったビジネスが稼ぎ頭になることも多い。このような状況下では、環境変化に適応する課題設定力と柔軟性、どんな環境でも稼ぐことのできるビジネススキルを持っているかどうかが重要になる。
例えば、キャリアの相談に来る方の中でも、希望するキャリアに対してセールスポイントとなる実績を資料にまとめてくる(課題設定力)方や、日頃考えていないような領域の議論についても、こちらの質問を的確に読み取って対応できる(柔軟性)方には可能性を感じる。また、客観的に自己評価できるか否かも将来の成長に大きく関わる。一般的に、男性は自分を過大評価し、女性は過小評価する傾向がある。あるポジションが空いたときに、能力が足りないのに意気揚々と手を挙げる男性、ポテンシャルがあるのに「私なんかとても」と成長機会を失う女性。どちらも自己認識に欠けているので、仕事を任せる側からすると困った存在だ。
投げかけに対する「反応」も重要な判断ポイントだ。例えば、300人を対象に講演をした場合、目線や、メモをとったりうなずいたりするタイミング、姿勢などから、仕事ができるだろう人10人くらいはすぐ見当がつく。講演後の質疑応答でも、そんな人の質問は質が高い。明確な仮説があり、周囲にとっても関心が高いと思われる質問を選ぶのだ。