話し方――口数は少なくてもいいが、声は大きく
部下は上司に「声が小さくて聞き取れませんでした」とは聞き返しにくい。だから上の立場になるほど、わかりやすく話す必要が高まる。相手が理解しやすいワーディングを選ぶセンスも必要だ。アンケートで、女性管理職が「声の大きい人」を評価しているのはそのためだろう。
話した内容が相手に理解される歩留まりは、3割程度だと思ったほうがいい。つまり、7割は聞き手の頭から抜け落ちてしまう。歩留まり率を上げることを考えると、聞き取りにくい声は論外なのだ。声の大きさに加えて、滑舌のよさ、明瞭な論理構成なども重要になってくる。
あるいは、声の大きさをバイタリティのバロメーターととらえているのかもしれない。声の小さい人でエネルギーレベルの高い元気な人はあまりいないからだ。
女性管理職が口数の少ない男性を評価している調査結果は面白い。饒舌に話せばいい、というわけではないのだ。例えば、オバマ大統領は絞り込まれた言葉でゆっくりとスピーチをしている。
論理構成が完璧でも聞き手の記憶に残らずに、話の内容が頭から流れてしまうこともある。改善するには小泉元首相の話し方も参考になる。論理に飛躍があっても、「感動した」「頑張った」などと共感を得られる短いフレーズで話すうえに、絶妙な間があって聞き手が考える猶予があるため、記憶に定着しやすいのだ。
もう一つ。調査結果のように、仕事ができる人ほど聞き上手なのは確かだ。加えて彼らは質問をするのもうまい。一問一答になることなく、的確な質問で会話の内容を掘り下げていくことができるのだ。女性たちが、「話を聞かないうえにビッグマウス」という昭和の肉食男子を否定した結果になったのは興味深い。
(構成=大宮冬洋)