良い睡眠を保つことは重要
また、別の研究からは、睡眠時間だけでなく、途中で何度も目を覚まさず、深い睡眠をしっかりとることが重要であり、深い睡眠が少ない人ほど、脳内のアミロイドベータやタウの異常が多い傾向にあることもわかってきました。
今後、人が眠っている間の脳の活動や、老廃物が排出される流れを詳しく測る技術が進歩すれば、認知症から脳を守るために、どのような睡眠が最もよいのかも明らかになっていくものと思います。
いずれにしても、良い睡眠を保つことは、認知症予防を考える上で重要な要素のひとつといえます。
睡眠不足も認知症リスクに影響する
2019年、今度はタウに対して、同様に睡眠の影響が調べられました。
研究では、認知機能が正常な30~60歳の参加者に、通常どおり眠る場合と、一晩中眠らない場合の両方を経験してもらい、腰から脳脊髄液を繰り返し採取しました。
その結果、一晩中眠らなかった場合には、通常どおり眠った場合と比べて、脳脊髄液中のタウが50%以上増えていました。
しかも、同じ参加者の試料で調べられたアミロイドベータの増加は約30%でした。
つまり、一晩の睡眠不足による増加は、アミロイドベータよりもタウのほうが大きかったのです。
ただし、ここで増えたのは、神経細胞の外側に放出され、脳脊髄液中を流れているタウです。一晩眠らなかっただけで、脳内に神経原線維変化が急にできたという意味ではありません。
本書の第2章では、タウを、神経細胞を傷つける「実行犯」とご説明しました。
睡眠不足によって細胞の外へ放出されるタウが増えると、タウの異常が脳内に広がりやすくなる可能性があります。睡眠は、アミロイドベータだけでなく、タウの異常な広がりを抑える上でも重要なのかもしれません。
以上の結果から、睡眠は認知症予防を考えるときに、とても重要であることがわかります。睡眠を「ただ休む時間」ではなく、日中に脳内にたまった老廃物を片づけ、脳の環境を整える時間だと考え直す必要があります。
覚醒中に脳内にたまった老廃物を、睡眠中に洗い流すように排出するしくみは、「グリンファティックシステム」と呼ばれ、近年、その働きが次々と明らかになってきました。
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