ソフトバンクの「群戦略」を、別の軸から考える

私は以前、『ソフトバンクで占う2025年の世界』を執筆した際、ソフトバンクグループ、バークシャー・ハサウェイ、アルファベットという3つの持株会社を比べたことがある。投資の仕組みはどう違うのか。投資先をどう選ぶのか。それぞれのミッションは、投資行動とどう結びついているのか。同じ持株会社という括りで見ても、価値を生む方法はまったく異なっていた。

さらに考えたのが、ソフトバンクの「群戦略」と、旧財閥の企業集団との違いだった。各分野でナンバーワンの企業が、それぞれの強みを保ちながら緩やかな資本関係で結びつく。当時の同社の説明資料では、銀行、商社、不動産と、さまざまな業種の企業を抱える財閥と、ナンバーワン企業の群とが対比され、群戦略の競争力の高さが示されていた。

ここで、私は一つの問いを立てた。財閥の競争力が低いのだとしたら、なぜ現在も旧財閥系企業がこれほど生き残っているのか。三菱、三井、住友は、すでに100年以上の歴史を持っている。

昔の東京・日本橋の風景
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成長する力と、存続する力は違う

この問いを置くと、比較する軸が一本増える。いまの成長力と、長い時間を通じて存続する力である。卓越した経営者は、新しい機会を見つけ、人を動かし、大胆に資源を振り向けて、企業を大きく成長させる。孫正義氏の経営を考えるうえで、その力量は極めて重要だ。同時に、何世代にもわたる存続を考えるなら、経営者が交代したあとも判断と行動を続けられる組織の力が問われる。

私は孫子の「五事」を現代の経営分析に応用した「五ファクター・メソッド」を使ってきた。その言葉でいえば、経営者のリーダーシップは「将」、組織を支える仕組みとマネジメントは「法」にあたる。何100年も続く企業になるには、「将」と「法」の両方、トップダウンとボトムアップの両方が要る。

同じ本で私は、ソフトバンクグループが300年成長し続けて生き残るためには、孫氏がいなくなったときにどうするのかという問いに向き合う必要があり、天才的なカリスマが後継者になることを簡単には想定できない以上、グループとしての組織力をつけることが重要だと書いた。モンゴル帝国が教えてくれるのは、拡大の速さそのものよりも、拡大した群をつなぎとめる仕組みの大切さである。群の一社一社が自ら判断できることは拡大の強みであり、承継を組織力として設計できれば、それは300年に届く構造になりうる。

では、その組織力とは、具体的にどのようなものなのか。私にとって、それを考える土台になっているのが、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)での経験である。