たとえば、今、成績が1のスタート地点にいて、1000の成績目標に向かって勉強しているとしましょう。幾何級数の特徴は、最初は伸びがゆっくりだということ。勉強してレベルアップしても成績は2。さらに勉強してレベルが上がると4になり、8、16と効果が累積していきます。こんなに努力したにもかかわらず、現在の成績は32。目標の1000の高みからすればスタート地点から変わっていないように思える。
この時点では多くの人は、「なぜこんなに勉強しているのに成績が上がらないのか」「才能がないのだろうか」と悩みます。そして1000の成績になった人を眺めて、「とてもかなわない」「ああいう人を天才というのだろう」と嘆息することでしょう。
しかし、嘆く必要はありません。忍耐強く勉強を繰り返せば、その後、成績は64、128、256、512……とみるみる上昇するからです。
勉強の成果というのはそういうもので、すぐには表れませんが、あるとき、突然視界が開けるように、そして爆発するように表れるのです。
512までたどり着けた人であれば、あと一息の努力で目標の1000に到達できる。これが勉強の相乗効果であり、「努力の継続」こそが一番大事な勉強の心得といえます。
成績アップの秘訣は特別な勉強法などではなく、成果が表れるまでひたむきに努力できるかどうか。近道はありません。やる気を維持して、勉強を続けることが肝心です。
こういった真理を子供に教えてやるだけでも、モチベーション維持の一助になるはずです。
池谷裕二
1970年、静岡県生まれ。薬学博士。東京大学大学院薬学系研究科准教授。『自分では気づかない、ココロの盲点』『脳には妙なクセがある』など著書多数。
1970年、静岡県生まれ。薬学博士。東京大学大学院薬学系研究科准教授。『自分では気づかない、ココロの盲点』『脳には妙なクセがある』など著書多数。
(小川 剛=構成)