トイレはなかったが、窮屈さは感じなかった
交通技術ライターの川辺謙一氏は、2020年12月に発刊した『超電導リニアの不都合な真実』(草思社)の中で、リニアに2度試乗をした経験を基に、乗客の視点でその課題を紹介している。
川辺氏は2004年に山梨実験線の初代車両と2019年にL0系に試乗した際の乗り心地などを評価し、主に4つの課題を挙げていた。
1点目には、車内にトイレが設置されていないことだ。
残念ながら、筆者たちが試乗した今回のM10にもトイレはなかった。
2点目に、当時のリニアの客室空間は東海道新幹線よりも狭く、窮屈だったという。もともと車体の幅が狭く、横一列に2人掛けと3人掛けの座席が並んでいる東海道新幹線普通車と違い、リニアは2人掛けが2つ並んでいて、その狭さは仕方ないだろう。
筆者は同行した大柄な編集者と並んで座ったが、それほどの狭さや窮屈さは感じなかった。シートピッチは比較的広くとられており、大きな荷物などは座席前に置いても問題ないようだ。
騒音、揺れも少なく、気圧変化による耳の痛みもなかった
川辺氏の3点目の指摘は、緩やかに加速するが、騒音や振動がかなり大きいことだ。時速500キロに達したときの感じる音と振動の不安定さを問題にしていた。
ただ、この川辺氏の指摘も、今回の試乗では騒音や振動はそれほど気にならなかった。同行した編集者も同じ意見だった。
時速500キロ時には、参加した記者たちは立ち上がって、天井などに映し出されたプロジェクション(映写)の「500キロ」の写真撮影などをしていたが、よろめいたりする様子もなく、それほど振動などを感じていなかったようだ。走行中に車内で立ち上がっても問題のない振動である。
4点目は、急激な気圧変化により耳の鼓膜が痛む「耳ツン」現象が起きたことを問題にしていた。
耳ツンはトンネル通過など車内の気圧が大きく変動したとき、気圧調整が遅れて耳がツンと痛む現象である。
川辺氏は、2004年の試乗でこれを訴え、2回目の2019年時のL0系でも、若干緩和されつつ耳ツンを感じたと書いている。
今回の筆者たちの試乗では、耳ツン現象を訴えた記者たちはいなかったようだ。川辺氏は乗車して耳ツンをいちばん不快に感じたことで、リニアの技術的な課題の1つだと指摘していた。個人差のある耳ツンが他の誰かにあったのかどうかわからないが、筆者には全く問題ではなかった。
川辺氏は2020年12月の時点で、「乗り心地に多くの課題があり、リニアはいますぐ営業運転できる移動手段ではない」と結論づけていた。6年近くたって、川辺氏の指摘した課題が改善されたのかもしれない。
今回の試乗では古賀所長への質疑時間がなかったため、のちほどJR東海に確認したところ、今回のM10車両には装備されていないが、別のL0系試験車にはトイレがあるという説明だった。なぜ、肝心のM10にトイレが装備されていないかの説明はなかった。



