「技術は外注すればいい」と割り切った
彼も10人のうちの1人だったが、家電の専門家ではない。1999年に入社した原氏は東北芸術工科大学の出身で、デザインを専攻していて、「生活に密着した日用品のデザインをやりたかった」というのが志望動機だった。
「入社した当時は、会社の名前を訊かれて答えると、『何の会社?』と返されるくらい知名度は低かった。『アイリス』という目薬があって、その関連会社と誤解されることさえありました」と言って、原氏は笑った。
原氏が家電分野で手掛けた代表的な商品の一つが、2012年11月に発売した2口IHクッキングヒーターだった。当時、据置型の2口IHは200ボルト電源を使い、設置工事を必要とする製品が一般的だった。一方、家庭用100ボルトで使える卓上型は、主に1口タイプだった。
「現在の大山会長が社長だったころで、社長は私たちに『我々はアイデアで勝負する。技術は社外にあるから外注すればいい』と言っていました。アイデアは、顕在化していない潜在需要を商品にするということでした」
「ガスに勝てる火力でなければ使いものにならない」というのが常識とされ、それを実現するために電源も200ボルトでなければならなかった。
家電の常識だった「200ボルト」を捨てた
原氏が開発したのは、家庭用の100ボルトコンセントで2口を同時に使え、工事をせずにガス台のスペースへ置ける商品だった。200ボルト式の据置型には火力で及ばないものの、機能を絞ることで、価格と導入のしやすさを優先したのである。そのコンセプトを、原氏が次のように説明する。
「『引き算の開発』と言ったりもしますが、私たちの開発コンセプトの基本はSRG(シンプル・リーズナブル・グッド)にあります。シンプルを考えるときに、まずは『ムダな機能がないか』を考えます。それを引いていきます。既存のIHクッキングヒーターをみたとき、まず感じたのがオーバースペックでした」
普通の家庭での料理でヒーターの性能の半分以上の火力で使うことは、そんなに多くない。それなら半分でもいいので100ボルト電源でもいい、と考えた。それで商品価格も安くできるし、わざわざ200ボルト電源に換える必要もないので工事費が不要になる。シンプルでリーズナブルなのだ。
ただし、料理をするのに1口よりも2口のほうが便利なので、ここは堅持する。シンプルでリーズナブル、しかもグッドなIHクッキングヒーターが完成した。これも、かなり売れたという。


