「プレゼン会議」では社長の反対を押し切ることも
開発コンセプトは、いまも変わっていない。次に手がける新商品は、毎週月曜日に開かれる「新商品開発会議」、別名「プレゼン会議」で決まる。現在は調理器具とか掃除機といった大まかな開発チームはあるが、アイデアを出すのは自由で、調理器具担当が掃除機のアイデアをだしたりする場合もある。
この会議には社長も出席するので、「社長の鶴のひと声」で決まってしまうのかと思いきや、そんなことはないそうだ。原氏が説明する。
「会議にかけるのはアイデアのうち3割くらいで、多くは開発者段階でボツになります。会議でプレゼンテーションするわけですが、ただプレゼンするだけではなく、参加者がディスカッションして決めていきます。社長の独断で決まるわけではありません」
ただし、社長も活発に意見を述べるそうだ。その新商品開発会議で否決されれば、それでお終いというわけではなく、復活もありうる。その経験は原氏にもあり、例としてあげてくれたのは取り出せる静電モップを付けたスティック式掃除機だった。
「掃除機を使う人はモップを必要としない、と何回か否定されました。しかし、掃除機が届かないところをモップで拭くシーンはけっこうあるので、モップが掃除機に付いていれば手に取りやすくて便利だと繰り返し提案して、最後は受け入れてもらえました」
重要なのは性能ではなく「生活者目線」
利用する生活者の目線に立てば、何が必要とされているのかが見えてくる。モップを付けることも、生活者目線に立てば間違いなく便利である。「欲しい」という利用者からの声があったからではなく、出してみたら「良い」といってもらえる需要、いわゆる潜在需要を発掘することがアイリスオーヤマの開発コンセプトの大きな柱でもある。
「潜在需要を発掘するには生活者の目線が重要です。そこからの発想、『ユーザーイン』を私たちは大事にしています。掃除機を考えていたときは、他社メーカーの掃除機を10台も購入して、潜在需要を探ったこともあります」と、原氏。
そうした潜在需要を実現して製品化するには、当然ながら技術力が必要になってくる。外注してもいいのだが、それだけ手間も時間もかかってしまう。その問題を解決するため、同社は2012年から、大手家電メーカーや関連企業で経験を積んだ技術者の中途採用を本格化させた。当時、大手各社では早期退職募集や人員削減が相次いでいた。管理職ではなく、もう一度開発・設計の現場で手を動かしたいと考えるベテラン技術者も、同社に集まった。
原氏によれば、2012年後半から2013年にかけて、数十名が入社したという。


