ベテラン技術者の“意外な本音”
大手で活躍していたベテラン技術者がはいってくれば、素人に近いアイリスオーヤマの社員とのあいだに大きな摩擦が起きてしまったのではないか、と気になる。それを質問すると、原氏は笑いながら答えた。
「これが、けっこううまくいきました。衝突するところもあるにはありましたが、こちらとしてはアイデアはあるけど技術が欲しい、大手にいた技術者は性能競争が優先されたり、管理職になったりしたことで、活かされてこなかった自分たちの技術を活かしたい。私たちとしてはつくらせたい、彼らはつくりたい、お互いの思いがうまくマッチングしました」
アイリスオーヤマはアイデアと技術を併せ持つことになったわけだ。これが、商品力に磨きをかけていくことになる。冒頭であげた洗濯機「OSH fit」も、そのひとつである。原氏の説明が続く。
「どのメーカーも洗浄力の強さを競っています。しかし大半の生活者にとって野球やサッカーで泥まみれになるシーンはめったにないし、夫婦2人だけの共稼ぎ世帯も増えているなかでは、泥汚れ落とすほどのパワーよりも、忙しいときでも短時間で洗濯を終えられるほうが必要とされているはずです。短時間できれいにするためには技術が必要ですが、大手メーカーでの経験もあって洗濯機ひとすじ何十年という技術者もいますから性能面での心配もありませんでした」
「9分で洗える」というインパクト
潜在需要を商品につなげていくユーザーインのアイデアと大手から人材をいれることで引き継がれた技術力が、みごとにマッチしたことになる。「9分」を謳ったのは、10分より9分のほうが時短のインパクトは強いという販促的なことを考慮してのことだった。
もちろん全部の洗濯を9分でやれるわけではなく、「化繊衣料が約1kgまで」という条件がある。夫婦2人だけで、化繊衣料を着る機会の多い最近のライフスタイルでは、かなり実用的でもある。
酷い汚れには対応できないのか、と心配する声があるかもしれない。それは単純に洗濯時間をのばすことでクリアできるし、それに対応できる機能は備えてもいる。
潜在需要を具現化し、高い技術力で支えている「OSH fit」は、当初販売予定数量の2倍を超えるヒット商品となっている。この売れゆきに、「こんな商品が欲しかった」という消費者の声が表れているようだ。
ユーザーインの発想とそれを実現する高い技術力が結びつくことによって、ヒット商品が生まれる。アイリスオーヤマの家電開発は、日本のモノづくりに大きなヒントを与えてもいるようだ。
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