ロンドンオリンピックで、日本が獲得した金メダルは7つ。そのうち女子レスリングが3つ、男子は1つと、金メダルの過半はレスリングから生まれた。その中でも、吉田沙保里選手はオリンピック3連覇、世界選手権11連覇を果たし前人未到の世界大会14連覇を達成。女子レスリングの立ち上げから現在まで発展に尽力してきた福田富昭さん(日本レスリング協会会長)は、その強さの秘訣は、最高の技術指導と、選手の精神修養に尽きると語る。
福田富昭
1941年、東京都生まれ。65年レスリング世界選手権優勝。日本レスリング協会会長。日本オリンピック委員会副会長。

――「おまえ、女にレスリングやらせる気か。スケベ野郎」。こんなひどいことを、女子レスリングがオリンピックの種目になると直感して委員会を設立しようとしたときに私は言われたんです。それは1983年のことでした。

「女子レスリング」という競技が存在するらしい。最初はイメージすら湧かず、実在しているとは信じられません。私自身、レスリング選手として65年の世界選手権で金メダルをとったことを最後に引退しましたが、レスリングはマットの上で汗にまみれ、体と体をぶつけあい、組み合って勝敗を決するスポーツ。男だけがやるもんだと思っていました。