集中力が続かなくなった子どもたち
原因として注目されるのが、スマートフォン(以下、スマホ)とデジタル化だ。OECDは、デジタル化の進行やスクリーン時間の増加、楽しみのための読書の減少が、読解力の低下と同時に起きていると指摘している。ただし、因果関係までは確定させておらず、まだ「仮説」に過ぎない。
ここで考えるべきは、語彙力とは別の課題である。
OECDによると、文章を急いで読み飛ばす生徒の割合は、2018年の約7%から2025年には約11%へと増えた。また前回(2022年)の調査では、授業中にほかの生徒のデジタル機器でほぼ毎回気が散る生徒は、そうでない生徒より数学の得点が約15点低かった。
「読む力」を支えるのは語彙の豊富さだけではない。最後まで意識を内容に向け続けられるかどうか、つまり集中の持続も欠かせない。読解力低下には、子どもが集中力を持続しにくくなっていることが関係している可能性がある。
受け身では読書の「報酬」は得られない
ところで、集中力のことに触れると、「今の子どもも好きなゲームなら何時間でも熱中するではないか」という反論が出ることがある。だが、ゲームへの集中と読書への集中は本質的に違う要素がある。
ゲームは画面が次々と変わり、数秒ごとに得点や効果音という報酬が返ってくる。それは、ゲームクリエーターたちがユーザーを飽きさせないことを最優先にしているからにほかならない。
極端に言えば、ゲームをやっているときは「次から次に現れる刺激に反応している」という面が強い。これは動画サイトでのショート動画も同様だ。
一方、活字が自ら刺激を与えることはなく、「報酬」もすぐには返ってこない。場面を思い描き、筋を追い、意味をつなぐ作業を、すべて自分の頭の中で行わなければならない。外からの刺激がなくても、自ら注意を向け続ける必要がある。
強い刺激に慣れるほど、刺激の少ない文字に注意を保つのは苦しくなりがちだ。日本で「速く正確に読む力」が落ち、「熟考する力」が保たれた背景には、能力そのものだけでなく、最後まで注意を保つ力の変化もあるのではないか。

