勉強しても長時間スマホで帳消し?
下位層ほど読解力が大きく落ちた理由も、ここから説明できる。本を読まない子どもでも、かつては漫画や雑誌などで日常的に文字に触れていた。それがスマホで見る短い動画に置き換わり、最低限の「読む量」まで失われつつあるのではないか。
仙台市の小中学生約7万人を追跡した東北大学の調査では、家で2時間以上勉強しても、スマホを1日4時間以上使う中学生の数学の平均点は、ほとんど勉強せずスマホも使わない生徒を下回っている。長時間のスマホ利用と学力低下との間に強い関連がみられる。
PISA2018でも、日本の生徒はネット上のチャットや1人用ゲームの頻度がOECD平均を大きく上回る一方、新聞や雑誌を読む生徒は10年足らずで大きく減ったと指摘されている。
スマホの長時間使用や、ゲーム、ショート動画、短いメッセージのやり取りと、読解力低下との関連は無視できない。
語彙力も集中力も重要なのは「入学前」
語彙の差が小学校入学前に生まれ、後から埋めるのが難しいことは、多くの研究が示している。
※プレジデントオンライン「だから中学生の『読み書き能力』が低下している…今こそ『詰め込み教育」を強化すべきこれだけの理由」(2025年7月21日)
見落とされがちなのは、自分の注意や行動を制御する力も就学前から大きく発達することだ。絵本の読み聞かせを最後まで聞き通す経験は、語彙を増やすだけでなく、注意を保つ経験にもなる。
反対に、幼いころから短い動画に触れる時間が増えれば、語彙や集中の土台づくりに影響する可能性がある。これは子どもや親の努力不足の問題ではない。読む力が育つ環境そのものが変わりつつあるという問題である。
子どもの学力を本気で向上させたいのであれば、学校教育だけでなく就学前教育への公的投資を増やし、語彙と集中の土台づくりを国の課題として位置づける必要がある。教育のスタートを小学1年生と考えると、足下をすくわれかねない。
なお、東京都千代田区では本格的に就学前教育に力を入れるべく、「千代田区の子どもたちのための就学前プログラム」を2025年に策定した。先進的な取り組みとして評価したい。

