ライバル2人を百叩きの上、惨殺

皇后の座を手に入れた武則天の復讐は、ライバルの追放では終わりません。元王皇后と蕭淑妃が生きている限り、皇帝の気が変わり呼び戻される後患があるからです。そこで彼女は、中国史に残る最悪で猟奇的な拷問、人豚(骨酔こつすい)を実行します。

牢獄に落とされた元王皇后と蕭淑妃に高宗が同情したと知るや、武則天は嫉妬と怒りに震え、部下に二人を百叩きにするよう命じました。皮が裂け肉が飛び散ったあと、二人の手首足首を全て切り落とします。

さらに「骨まで酒に酔わせておあげ」と冷たく笑い、生傷がむき出しの二人を酒の入った甕かめに投げ込ませたのです。傷口からアルコールが染み込む激痛の中、手足を失い甕の中で蠢うごめく姿はまさに「人豚」でした。

二人は地獄の苦しみを味わい絶命します。死に際、蕭淑妃は「来世では私が猫になり、武則天をネズミにしてのどを噛み切って殺してやる」と呪いの言葉を吐きました。恐怖した武則天は宮中で猫を飼うことを一切禁じたといいます。

政治家も皇族も対象にした恐怖政治

こうして不動の地位を築いた彼女は、男尊女卑の思想を持つ政治家たちを徹底的に粛清しはじめます。誰でも反逆者を密告できる銅匭どうきという密告箱を設置し、中国全土を相互監視社会へと変貌させました。出世欲から嘘の密告が横行し、逮捕された者はサディストの酷吏こくりたちによる凄まじい拷問にかけられます。

鼻に酢を注ぎ込まれ、頭の鉄の輪に楔くさびを打ち込んで脳が飛び出るまで締め上げられれば、誰もが無実の罪を自白しました。有能な政治家や唐の皇族が次々と処刑され、彼女の治世前半は血の雨が降る恐怖政治となったのです。

最終的に彼女は自分の息子である皇太子さえも廃し、自ら皇帝となって周しゅうという新しい国を建てるに至りました。