「本当の地獄」は術後の3日間

宦官になるための去勢手術は、紫禁城しきんじょう近くの浄身房じょうしんぼうという専門施設で、刀子匠とうししょうという職人によって行われました。傷口の化膿を防ぐため暑い季節は避けるが吉。麻酔はなく、気休めにトウガラシを煮込んだ刺激物を飲まされるのみでした。

いよいよ手術本番。患者はベッドに縛り付けられ、睾丸と陰茎を根こそぎ切り落とされます。止血後、傷が治る過程で肉が盛り上がり、尿道が塞がって膀胱破裂で死ぬのを防ぐため、金属や麦の茎で作った「栓」が尿道に差し込まれました。

しかし、本当の地獄は術後でした。傷口への尿の侵入による炎症を防ぐため、3日間は水も食料も一切禁止されます。激痛と高熱、強烈なのどの渇きに耐え、3日目に栓を抜いて尿が勢いよく噴き出せば生存確定となります。尿が出なければ尿毒症で死に至る、まさに命がけのロシアンルーレットでした。

紫禁城の太和殿
写真=iStock.com/Thomas Zhang
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「宝」として大切に保管された理由

運よく生存しても、彼らには過酷な後遺症が待っていました。

身体的変化:男性ホルモンを失うことで体は女性化・老化し、髭は抜け、甲高い老婆のような声になります。当時の荒っぽい去勢手術は括約筋かつやくきんを傷つけることも多く、尿失禁に悩まされることも。臭いを誤魔化すためにキツい香水をプンプンさせていたため、周囲からは陰口を叩かれました。

精神的変化:家庭や性欲といった男の尊厳を失い、蔑さげすまれた宦官たちの心は歪んでいきます。心の穴を埋めるため異常なまでに「金」と「権力」への執着を見せるようになり、冷酷な怪物へと成長していくのです。

ちなみに、切り落としたブツは「宝(パオ)」として防腐処理され、油の入った壺に密封して大切に保管されました。これには出世時の身体検査の証明書としての役割と、「五体満足でなければ先祖の墓に入れず、来世で人間に生まれ変われない」という死生観から、死後に棺桶に入れて完全な体に戻るためという切実な理由がありました。手術代のカタとして「宝」を取られた者は、宦官として出世した後に大金を払って買い戻しに行きました。