制裁されているのは、ロシアか、ドイツか
ちなみに、現在、ドイツがどこからガスを輸入しているかというと、44%が産ガス大国のノルウェーからで、これはこれで危険。ロシアに依存しすぎていたからこのような事態になったというのに、ドイツはあまり学んでいない。
そして、オランダの24%、ベルギーの21%と続く。
ただ、オランダとベルギーからパイプラインで送られてくるガスには、ロシア産のLNGが混入しているどころか、特にベルギーが輸入しているガスは大部分がロシア産の時もあるという(欧州統計局の発表)。
EUはロシアのウクライナ侵攻後、制裁だと言ってパイプライン経由のガスは止めたが、LNGは放置した。これを止めるとヨーロッパの産業が壊滅するからで、いつもながらのダブルスタンダードだ。
つまり、結果的にドイツは依然としてロシアガスの買い手。ただ、以前は安価な生ガスとして直輸入していたのが、今では何倍も高い買い物となっている。制裁されているのはドイツではないか。
なお、EU欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、27年からはLNGも全面輸入禁止だと鼻息が荒い。ただ、27年はすぐ目の前に迫っているから、非現実的な話だ。
万が一の時は、産業用ガスを遮断する
一方、非常に現実的なのが、ドイツの送電網を管轄している連邦ネットワーク庁が準備している「安全プラットフォーム・ガス」、および「非常計画・天然ガス」という緊急措置。万が一、ガスの貯蔵が切れそうになったら、一般家庭や病院を守るため、産業用のガスを遮断する計画だという。
産業立地としては完全に失格。多くの基幹産業が脱出し始めたのも無理はない。
なお、政府は、最大15億ユーロ(約2400億円)の予算で、政府自らがガスを買って貯蔵する「国家戦略的ガス備蓄」というプロジェクトも立ち上げたという。
注目すべきはイタリアで、やはり巨大な地下の貯蔵庫を有するが、政府の補助もあり、現在、すでに貯蔵率84%だそうだ。危機管理では秀逸なポーランドも、貯蔵庫の容量は小さいものの、やはり98%を達成した(2026年9月17日時点)。
ただ、ドイツはこれからいくら頑張っても、この冬を乗り越えられる保証はどこにもない。貯蔵率は現時点で56%(2026年9月17日現在)。ガス事業者らによる予約済みの貯蔵容量は83%。ガス貯蔵事業者団体INESが発表した試算によれば、11月1日までに77%まで技術的に充填可能だという。しかし、それでも義務となっている80%の貯蔵率には届かない。
問題は、ドイツのガスが足りなくなった時、果たして他国がドイツに手を差し伸べてくれるかどうか。
また、ドイツ政府が進めている風力と太陽光の発電もお天気次第なので、日が照らず、無風になる時期も多い冬は、発電に回されるガスの量も増える。こうなると、今年の冬の最大のテーマはお天気で、国民はどうにか暖冬になりますようにと祈るしかない。こんなことを、誰が想像しただろう。
以上、ドイツの現在の危ういガス事情でした。
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