ロシアガスへの依存率は55%
一方、もう一つの貯蔵施設とは、まさに空洞型のものだ。
地下の分厚い岩塩層に水を注入して塩を溶かし、人工的に作った数km規模の巨大な空洞を、ガスの貯蔵庫として利用している。これが、主に北ドイツの北海沿岸付近に30カ所ほどあり、こちらはガスの出し入れがスムーズなので、突然の寒波襲来などで急にガスが必要になった時にも使えるという。
ちなみに、アジアではこういう自然の貯蔵庫は限定的だ。日本でも、LNGはよく港湾地区などで見かける丸いタンクで貯蔵されているが、タンク内で自然に蒸発してしまうので、備蓄できるのは2週間分という危うい状態だ。
ドイツは冷戦時代から、東ドイツだけでなく西ドイツも、脈々とソ連の天然ガスを輸入し続けてきたが、それは、ドイツが統一し、ソ連が崩壊しても変わらなかった。その後、2011年になってロシアと統一ドイツ間の海底パイプライン「ノルトストリーム」が完成し、ロシアガスの輸入に拍車がかかったのは周知の事実だ。22年2月、ロシアがウクライナに侵攻した時、ドイツのロシアガスへの依存率は55%に達していた。
「11月時点で貯蔵率80%」が義務だが…
そのちょうど1カ月後の22年3月末、ウクライナ紛争によるガスの逼迫を懸念したドイツ政府は、ガス貯蔵法を可決。
現状、ガス貯蔵施設に対し、毎年11月1日は80%の貯蔵率を保つことを義務とし、さらに、2月1日に30%の貯蔵率を切ってはならないと規定されている。
そうするうちに同年9月、ノルトストリームが爆破され、ドイツのガス事情は緊迫。当時のハーベック経済相(緑の党)が国民に向かって、シャワーの温度を下げろだの、セーターを重ね着しろだのと要請したことは、まだ私たちの記憶に新しい。ただ、この年も、その翌年も、暖冬が幸いし、ドイツはガス不足をどうにか切り抜けて今日まできた。
ところが、現在、ガス事情は初めての重大な困難に差し掛かっている。貯蔵率は9月初旬の時点で53%。「15年前に記録が始まって以来、同時期としては最低水準」(INES)で、かなり危機的な状況だという。
なぜ、こんなことになったか?

