心理的警戒心のハードルを越えられるか

では、なぜ1:5の法則は、人間心理に基づいた絶対に変わることない真理なのか。

たとえば、あなたが初めて誰かと会う場合、その人が自分に害をもたらさない人かどうか、警戒しないでしょうか? 親が子供に向かって「知らない人についていったらダメよ!」というのも、見知らぬものへの警戒心の現れ。

ですが、何回か会ううちに警戒心は薄れ、逆に信頼感が増していきます。これは「単純接触効果」と呼ばれ、スタンフォード大学名誉教授だった心理学者ロバート・ザイアンスの研究からも示されています。

単純接触効果とは、接する機会が増えるほど、対象に対して好印象を抱きやすくなるという心理現象です。ビジネスの場合、この傾向はさらに顕著。なぜなら初対面にもかかわらず、何かを売ろうとされるのは明らかだからです。

つまり、新規顧客を獲得するには、この心理的警戒心のハードルを越えなければなりません。一方、既存顧客なら、このハードルはすでに越えています。何かを購入してもらう際に、どちらが容易かは明らかです。

人は得することより、損しないことを優先

さらに「損失回避の法則」という心理学の理論によれば、人は得をすることよりも、損をしないことを優先する傾向があります。

①1万円を手に入れる
②1万円を失わない

どちらかの選択を迫られた場合、②の「1万円を失わない」という行動を取る人のほうが多いのです。これを、日常生活のお店選びの場合に当てはめると、「せっかくお金と時間と労力を使ったのに、全然よくなかった」という目には遭いたくありません。

そのリスクを避けるために、多くの人は“以前そこそこ満足したお店”をもう一度選ぶのです。

美容師に仕上がりのチェックを促された女性客
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

美容院を変えたら、イメージと違う髪型にされた。歯医者を変えたら、治療が雑で痛かった。こうした“失敗の痛み”を避けようとするのが、人間心理なのです。

だからこそ、一度来て満足し、リピートしてくれた既存顧客こそ、最も大切にしなければなりません。彼らは、新規顧客の5分の1のコストで通い続けてくれる存在です。

もし、あなたが常連として通っているお店が、新規顧客ばかりを優遇し始めたらどうでしょう。気持ちはわかっても、あまりいい気分はしないはずです。

そんな状況が続くと、足しげく通っていたお客様も、次第に足が遠のいてしまいます。つまり、新規集客でコストがかかるうえに、最も大切なリピーターまで失ってしまうことになるのです。