国を救った側近も事実上の軟禁状態に?

現在の中国では、政治と経済の両面で大きな変化がみられる。政治面では、習近平政権の粛清が加速している。2027年の第21回党大会で総書記4選に向け、習氏の政治体制を強化する狙いはかなり強いとみられる。そのためには、自身の支持基盤を盤石にする必要がある。

人民解放軍のトップクラスの幹部の粛清は、その代表例といえるだろう。1970年代以降の人民解放軍の体制の中で、現在の指導部の人数は最も少ないとの分析もある。今年6月、かつて習氏の側近中の側近とみられていた、王岐山氏(元国家副主席、2023年引退)が事実上の軟禁状態に置かれているとの報道まで出た。

2019年10月23日、迎賓館赤坂離宮において、中国の王岐山国家副主席と会談を行う安倍総理大臣
2019年10月23日、迎賓館赤坂離宮において、中国の王岐山国家副主席と会談を行う安倍総理大臣(写真=内閣官房内閣広報室/首相官邸ホームページ/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

この王岐山氏、1990年代以降の中国の経済と政治運営において、非常に重要な手腕を発揮した。王氏は、金融行政のプロとして名を上げた。1997年のアジア通貨危機の際にも、中国は大きな打撃を受けずに済んだ。それは、王氏が危機を予想して、潤沢な流動性供給を行ったことに支えられたとの見方は多い。

リーマンショック直後、当時の米財務長官だった、ヘンリー・ポールソン氏が急遽中国を訪問した。その目的は王氏との接触であり、ポールソン氏は王氏と緊急会談を持ち、世界経済を支えるための4兆元(当時のレートで約57兆円)の財政出動を求めたと言われている。

AI導入が進み、若者の仕事がない

2012年、中国のトップについた習氏は、王氏の金融行政手腕を評価して中央規律検査委員会トップに指名した。習氏は王氏の高い手腕を駆使して、軍から中央・地方政府内の不正とみられる資金の流れを洗い出し、「反腐敗」を徹底した。その人物までが、今回、粛清の対象になった。

習氏は、党と軍の完全掌握を狙っているのだろう。習氏の政治優先の姿勢は、これまでにも増して鮮明といえる。一方、現在の中国経済はかなり厳しい。不動産バブル崩壊から6年近くたった今も、住宅価格は下げ止まっていない。不動産業界などの不良債権残高は増加傾向だ。地方政府の財政悪化懸念も高まった。

多くの中国企業は内需停滞に対応するため、AI導入などによってコストカットを徹底している。バブル崩壊とAI導入の加速が重なり、若年層(16〜24歳、学生を除く)の失業率は高止まりしたままだ。