「麻生家が藤原氏になる」と繰り返した野田元首相

さて、麻生家が藤原氏と化すことなどありえないと考える筆者にとって、最も許しがたいのが野田元首相である。なぜかといえば、首相経験者という肩書きゆえに、彼には強い発言力があるからだ。

2026年1月24日、野田佳彦氏
2026年1月24日、野田佳彦氏(写真=Makochan12.9/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

6月22日に放送されたインターネット番組「NoBorder News」の中で、野田氏は次のように述べている。

「麻生さんの妹の信子さまが当主である宮家が、養い親として養子を受け入れることができて、男子が生まれたら皇位継承順位が付く。それはいくらなんでも、藤原道長じゃないですか。藤原家じゃないですか、麻生家が」

また7月6日には、自身のホームページでもこう述べている。

「昨秋、突然に三笠宮寛仁親王妃家という新しい宮家が創設され、麻生元総理の妹である信子さまが当主に就かれましたが、信子さまが養親になる意思があれば縁組を進めて良いのでしょうか。(中略)平安時代の藤原家のように、令和は麻生家が『この世をばわが世とぞ思ふ』時代になるのでしょうか」

彼はこのように揶揄を繰り返しており、そのたびに『時事通信』などの大手マスコミに取り上げられてきたのである。ゆえに野田氏こそが、御厨氏の「麻生家が藤原氏のようになる」という見解を世に広めた第一人者だといってもよい。

「突然できた新宮家」は養子のためだったのか

筆者がとりわけ野田氏を批判する最大の理由は、彼の振る舞いが「令和の藤原氏」という揶揄にとどまらないことだ。

「昨年9月に突然作られた『三笠宮寛仁親王妃家』の信子さまは、麻生太郎・自民党副総裁の妹。高市政権の『利害関係者』とも言えます」

野田氏は『文芸春秋』の鼎談にて上のように述べているし、また「NoBorder News」では「どさくさで宮家が作られた。議論もなく、いつの間に決まったんだろうという感じ。どさくさで、どっと来た」などとも述べている。

このように信子妃殿下の新しい宮家について、唐突感を強調するとともに、あたかも「養子縁組の受け皿を増やしたい政権の都合によって急造された」と印象付けたいかのような発言まで繰り返しているのである。

彼の中では、宮家であることが養子縁組の大前提とされているようだ。しかし、養子はあくまでも皇族が個人単位で取られるものであることは、具体的な典範改正案が公表される前から自明であった。

なぜならば、宮家とはそもそも皇室典範に規定される存在ではないからだ。たとえ宮家がどれほど増やされたとしても、皇室が受け入れられる養子の最大枠が増えるわけではないのである。

とある宮家に属する方々がそれぞれ養子を取られて、結果的に一つの宮家で複数人をお迎えになる。あるいは、とある皇族がお一人で数名の養子を取られる。このようなことも理論上は可能なはずだから、事前準備として宮家を増やす必要性はほぼない。

野田氏自身、首相在任中の平成24(2012)年3月26日に「(宮家は)法的な制度としては位置付けられていない」と述べているのだが、忘れてしまったのだろうか。皇室への関心の高さを自負している彼のことゆえ、このような皇室制度を語るうえでの基本的な事柄を失念したとは考えがたい。