目指すべきコレステロール値の“下限”は
医療の現場ではコレステロールを下げるため、しばしば「スタチン」という薬が使われます。
たしかにスタチンには、心血管関係の病気のリスク低減に効果があるのは事実です。
その一方で、スタチンはコレステロール合成にかかわる経路を抑えるため、副作用として筋肉痛、倦怠感、肝酵素上昇(肝細胞の破壊や炎症の可能性)、糖尿病リスク増加などが起こる可能性もあるのです。
これは、代謝の基盤に手を加えるという「介入」の重みを示しています。薬を否定するものではありません。ただ、「どこまで下げるべきか」を個別に判断して、一人ひとりの健康と医療を考える時代に入っていると言えるのです。
体質、遺伝、年齢、性別、ホルモン状態、肝機能、ミトコンドリアの状態……さまざまな要因によって、最適なコレステロール値は変わります。ですから、目指すべきコレステロール値の“下限”にも個人差があります。
近年は、単に数値を追いかけるのではなく、全体の代謝バランスを見ながら調整する考え方が重要視されるようになってきました。コレステロール値が低いほどいいとする単純な理屈でなく、“材料を残しながら負担を下げる”という視点です。
「敵」か「味方」かという二択ではない
コレステロールの扱いは、体との対話を必要とします。疲労、気力、睡眠、肌や髪の状態、感染しやすさ、回復速度……数字では表せないサインが、すでに体から発せられているかもしれません。
それらを無視して、“基準値”という外側の指標だけに合わせると、本来の健康から遠ざかることがあるのです。
ここまで説明してきたように、コレステロール自体は決して悪者ではありません。値を減らす技術ではなく、酸化を抑制して「異物」をつくらないことが求められているのです。
LDLがある程度存在することは、むしろ体に必要な資源がめぐっている証拠であり、高齢者ではLDLが低すぎるほど死亡率が上がるという研究結果も報告されています。
つまり、問うべきは「体内は酸化しやすい状態か」「炎症が慢性化していないか」「血糖値は安定しているか」といった、体内でつくられる異物、酸化LDLをつくり出す環境です。
「敵」か「味方」かという二択ではなく、状況に応じたコレステロールの最適点を探ることこそ健康へのたしかな道筋なのです。


