動脈硬化が起こるメカニズム
こうして活性酸素がLDLを酸化させると、LDLは形状や性質を変化させ、免疫細胞であるマクロファージが異物として認識する物質「酸化LDL」へと変わってしまいます。
変質した酸化LDLは、免疫細胞であるマクロファージが異物として認識することで取り込み、除去されていきます。しかし、すべてがすべて、うまくいくわけではありません。処理しきれない酸化LDLを抱え込んだマクロファージは、やがて内部が泡状に膨らんだ「泡沫細胞」へと変化し、“死亡”してしまうのです。
この泡沫細胞が血管壁に溜まり続けた結果、動脈硬化の根本現象である「プラーク(こぶ)」が形成されます。
ここで理解しておきたいのは、動脈硬化とは「LDLが多いから起きる」のではなく、「酸化LDLが生まれ、それが処理渋滞を起こした結果として起きる」現象だということ。
つまり、LDL値という数値だけに焦点を当ててしまうと、動脈硬化の病気の原因を見誤ってしまうのです。
健康のために目指すべきは、LDLをゼロに近づけることではありません。むしろ、酸化と炎症の根を絶ち、LDLが“真面目に働ける環境”を整えることです。
“生命活動の材料”を運ぶための運搬体
一般的なガイドラインでは、LDLコレステロールは心血管疾患リスクを下げるために70〜100mg/dL未満を目標にすることが推奨されています。しかし、60歳以上を対象とした疫学研究では、「LDL値が多少高めの人のほうが、死亡率や長期生存率が低リスクになる」傾向が報告されています。
具体的には、健康な中高年(50〜89歳程度)で、LDLコレステロールが100〜189mg/dLの範囲にある人々の死亡リスクが、一番低かったのです。
現代医学では、高コレステロールは動脈硬化や心疾患のリスクとされ、下げるべきものと位置づけられてきました。とくに、いわゆる「悪玉」LDLコレステロールは悪者扱いされ、下げる薬やサプリメントが広く使われています。しかし最近では、「下げれば下げるほどいい」という考えは間違っていることがわかっています。
そもそもコレステロールは細胞膜、ホルモン、ビタミンDなどの構成要素として消費され、生命活動に必須の存在です。そしてLDLは、コレステロールという“生命活動の材料”を運ぶための運搬体なのです。
LDLは、言うなれば体内の「物資輸送トラック」であり、細胞修復やホルモン合成の現場に材料を届ける役割を果たしています。そのため、LDLが存在すること自体は正常な生理機能であり、むしろ健康な体に必要な物質だと言えるのです。

