不足すると感染症に弱くなり、炎症が長引く

繰り返しますが、コレステロールは体にとって優秀な“材料”です。細胞膜の主要成分であり、膜のしなやかさや情報のやりとりを支えています。また、ステロイドホルモン(性ホルモン、副腎皮質ホルモン)、ビタミンD、胆汁酸など、生命活動に必要な物質の原料でもあります。

つまり、コレステロールが極端に不足すると、細胞の構造、免疫、ホルモン、代謝の幅広い機能に“材料不足”が起こり、健康を維持するシステム全体が弱体化する可能性が生じるわけです。

では、コレステロールが低すぎる状態では、具体的にどのような“悪影響”が考えられるのでしょうか。

わかりやすいところでは、まずホルモンバランスの乱れが挙げられます。コレステロールは性ホルモンの材料であり、性ホルモンの低下は活力や筋力の低下につながることが知られています。

ストレスにかかわる副腎皮質ホルモンもコレステロールからつくられるため、慢性的なストレスに対して踏ん張りが効きにくくなり、慢性疲労や意欲低下へとつながることがあります。

ベッドでノートパソコンを開いて頭を押さえる女性
写真=iStock.com/hxyume
※写真はイメージです

さらに、悪影響は免疫にも及びます。

細胞膜の質が低下すると、免疫細胞が情報を受け取り、それに適切に反応する能力も低下しやすくなります。感染症に弱くなったり、炎症が長引いたり、逆に自己免疫的な過剰反応に偏ることもあり得るのです。

うつ症状、不安傾向、認知機能の低下につながる

LDLコレステロールは「運び屋」として脂質を各細胞に届ける役割を持っています。この運搬が滞ると、細胞は燃料や構造材の供給不足に陥り、修復力が落ちていってしまうのです。

さらに脳に対しても、コレステロールは重要な役割を果たしています。

脳内コレステロールは、神経伝達物質の受容体の構造維持に欠かせず、情報処理や記憶形成に対する基盤となります。そのため、低コレステロール状態では、うつ症状、不安傾向、認知機能の低下などが現れる可能性があるのです。

もちろん、因果関係には個人差やさまざまな要因が絡みますが、“脳が働くための材料が足りない”という状態を考えると、それらの状態に陥るのは決して不思議なことではありません。

コレステロールが低すぎることによる意外なリスクとして、がんとの関係が指摘されることもあります。コレステロールは細胞膜やホルモン合成に使われるため、細胞増殖や修復の基盤にかかわります。

いくつかの疫学研究では、低コレステロール群でがん発症率が高かったという結果もあります。

ただし、そもそもがんの存在がコレステロールを低下させていたという可能性もあり、因果の方向は単純ではありませんが。いずれにせよ重要なのは、コレステロールが「低い=健康」とは言えないということなのです。