グローバル展開、法人営業、ネット、富裕層攻略……。時代の流れを受けて、創業101年企業が動き出した。代理店業から、 “メーカー業”へ脱皮を図る「戦略」を徹底分析する。
200人の社員で1200億円を売る
分社化において、JTB代表取締役社長の田川博己が目指した「専門性が高く意思決定の早い組織」をもっとも体現しているのは、Web分野に特化した「i.JTB」だろう。国内の宿泊に特化した「るるぶトラベル」と国内外のツアーや宿泊施設を扱うJTBのホームページ。運営する2つのサイトの12年度の販売額は前年比20%増の計1200億円に達した。2013年も25%増の勢いで伸びていた。
ただし、「るるぶトラベル」は競合する「楽天トラベル」「じゃらんnet」の2サイトに大きく水を開けられ、「一休.com」にも先行を許している。JTBがホームページを開いたのは93年。比較的、早い段階での立ち上げだった。では、なぜ後れを取ったのか。i.JTB代表取締役社長の今井敏行は説明する。
「ホームページは商品紹介と店舗誘導のためにつくったんですが、その期間が長すぎた。理由は、やはり店舗を構えてお客様に来店していただき、しっかりコンサルをしてというスタイルで100年やってきているので、eコマースへの思い切った転換ができなかったからです。『るるぶトラベル』は07年に立ち上げましたが、08年、09年と700億円のラインで足踏みしました。本当はオンライン用の商品を充実させなければいけないし、決済までスムーズにいくようなユーザビリティが必要でしたが、それをつくるのに時間がかかったんですね」
今井はやんわりと話すが、内部では相当の軋轢があったようだ。Webで売ったら店舗で売れなくなる。客側の視点を無視した内向きの論理がeコマースの足を引っ張り、先行者利益を反故にした。
だが、10年に入ると風向きが変わり始める。ネットは無視できない。誰もがそのインパクトを認めざるをえなくなり、そこでまた喧々諤々の議論が始まった。
「それはもう、毎日のように今後、どうするんだ、やるのかやらないのか、継続するのかしないのかの議論を重ねました。最後は田川の裁量ですね。1年前は『るるぶトラベル』を1とすると、『楽天トラベル』と『じゃらん』は7でしたが、もう5ぐらいにまで近づいてきた。15年には2400億円を達成し、相対市場シェアを50%に持っていく。いずれはJTBの取扱額の25%くらいをオンラインで売ることが私のミッションです」