JTBの店はサロン化していく

JTB首都圏ロイヤルロード 
銀座事業部事業部長 
藤本 信

JTBの未来の店頭はどうあるべきか。その一端を示すのが、10年前に開設した「ロイヤルロード銀座」だ。上質な旅行体験を求める富裕層をターゲットに、平均70万円のパッケージツアーを販売する新業態の売り上げは前年比110~120%で推移している。

「パッケージとはいえ、カスタマイズする部分が多いので、営業も一件一件、お客様のご自宅にうかがってお話をまとめることが多く、オーダーメードの営業ですね。高級な旅行商品を販売する旅行会社はほかにもありますが、やはりJTBブランドへの信頼感は厚い。そうした期待に応えるために、なかなか入手しづらいオペラのチケットを確保したり、通常であれば数カ月先まで予約が取れないレストランを手配するなど、限られたお客様へのサービスに力を入れています」(JTB首都圏ロイヤルロード銀座事業部事業部長の藤本信)。

車を運転してヨーロッパを回りたいが、道に迷いたくない、かといって隣にナビゲーターがいるのでは旅行気分が楽しめない、という客のリクエストにも難なく応えてきた藤本の役回りは限りなくコンシェルジュに近い。

「ロイヤルロード銀座」は全国に6店。スタッフの数は約100人。つまり100人のコンシェルジュが育成されていることになる。これこそが、「ロイヤルロード銀座」の狙いだ。田川は言う。

「新しい富裕層戦略を展開する意味もありますが、ここで鍛えた社員を全国に配置するのも目的の一つ。最終的にはJTBの店はサロン化していかなくてはいけないと思っています。いま提携店を含めると1000店ぐらい店がありますが、これから10年は持つとしても、20年先、30年先を考えたら、コンシェルジュ的機能を持った店にどんどん淘汰される。ネットは予約装置としては最強ですよ。お客様にただパンフレットを見せて説明するだけならネットで十分。パンフもそのうちiPadに取って代わられてなくなるかもしれない。ネットで販売する商品と店を構えて店頭で売る商品の意味を明確に出していく時期はそう遠くない。分社化して10周年を迎える15年度までにははっきりとそういう流れがくるのではないか」

客を旅へと誘い、新しい価値や体験、適切なソリューションを提供する。国内であれ海外であれ、個人であれ法人であれ、その働きかけをするのが店舗や支店の役割だ。店舗を支える人材を育成するため、JTBグループでは年間1500億円を人件費に費やしている。人材こそ最大の投資だと考えるからだ。これこそ、JTBの一番の持ち味だろう。