幼稚園に通えなくなった「盗撮犯」の子

名古屋で起きた教員グループによる盗撮事件でも、その構図は顕著でした。主犯格の教員には妻子がいましたが、メディアの取材は、彼の自宅や、そのすぐ近くにある妻の実家にまで及びました。

インターネット上には、モザイク処理を施しているとはいえ、自宅の外観や妻の経歴まで掲載するメディアも散見されました。

こうした報道のあり方は、加害者家族の生活を著しく脅かします。本書の第2章で取り上げた、スマホを筆箱に隠し入れて校内盗撮をした教員・田中一朗氏(仮名)のケースも同様です。事件が報道されると、妻と子どもは周囲の視線をおそれて、自宅から出られない状態になりました。

当時、長男は幼稚園に通っていましたが、登園させることもままなりません。子どもは事情を理解できないため「幼稚園に行きたい! 友だちに会いたい!」と泣き叫びますが、妻はただ息を潜めて耐えるしかありませんでした。

苦しんで悲しい絶望的な少女
写真=iStock.com/SB Arts Media
※写真はイメージです

盗撮加害者の約6割が結婚歴のある人

盗撮犯というと、モテなさそうな独身男をイメージする方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、これまでクリニックを訪れた盗撮加害者1031名のデータでは、結婚歴のある人は全体の約6割で、田中氏のように子どもがいる人も少なくありませんでした。なかでも深刻なのが、性加害者の妻たちに向けられる性欲原因論に基づいた偏見です。

夫が盗撮などの性加害で逮捕された場合に、「妻が夫の性欲のケアをしていなかったからだ」「夫婦間でセックスレスだったから、夫が性加害をしたのだ」など、性欲の解消と事件の因果関係を結びつける言説です。夫婦の性交渉と性犯罪には、相関関係はありません。

性犯罪を性欲の問題に矮小化するこの言葉が、さらに罪深いのは、加害者までもが「そうか。自分がした性加害は、妻とはセックスレスだったからしかたなかったのだな」などと自身を正当化してしまう点です。

子どもが性犯罪をした場合、親への批判の目はすさまじいものです。