「中高年の転倒事故」が圧倒的多数

実際の現場で起きている事故について、佐伯氏はこう述べる。

「我々が救助に出動する案件は、年齢でいうと50歳以上の中高年の遭難が半数以上を占めています。登山経験は長短があって、20、30年って方もいれば、2、3年という方もいます。ほとんどの方はちゃんと登山やハイキングの装備を持ってきているんですが、それでも遭難しちゃうみたいな感じですね」

事故要因で圧倒的に多いのは転倒だという。これは高尾山に限ったことではなく、全国的に見られる傾向で、近年は転倒による事故が本当に多い。

「下りでつまずいて転ぶケースが目立ちます。油断してしまうのか、もう少しで下り終えるというところで転んで救助要請してくることもけっこうあります。

ちょっと変なたとえですが、運動会でリレーに参加したお父さんが、速く走ろうという気持ちはあるんだけど、足がついていかなくて、もつれて転んでしまうのといっしょだと思います。

足首を骨折して山の中で一人で不平を言うトレッカー
写真=iStock.com/Pheelings Media
※写真はイメージです

若い人たちだってつまずいたりするんだけど、とっさにリカバーできるから、転んでもかすり傷程度ですんでいるんでしょう。でも中高年はうまくリカバーできずに、手首を折っちゃったり、頭や顔面を地面に強打したりしてしまいます。

体力はもちろん、バランス感覚も低下しているし、反射神経も鈍ってくるから、仕方ないんですよね」

滑落、転倒、道迷い、疲労、病気…

高尾山での遭難事故の統計データは、前述の警察庁のもの以外は公表されていないので、詳しいことはわからない。ただ、ネットで探してみたら、「高尾山岳救助隊調べ」という「高尾山における2017年の遭難事故の概要」というデータが見つかった。

それによると、2017年は死亡5件、重症18件、軽症24件、無事救出等57件など計107件の事故が起きている。事故要因は滑落、転倒、道迷い、疲労、病気などさまざまで、死亡事故5件のうち2件は病死、2件は滑落、1件は首吊り自殺だった。

近年多発しているのは転倒事故だが、そのほかの事故要因は2017年同様、やはり多種多様だという。高尾山には何本もの登山ルートがあるが、道標がしっかり整備されていることもあり、道迷い遭難者はそれほど多くないようだ。

死亡に至る事故も少なく、急性心不全や滑落によって亡くなってしまう事例は年に1回あるかないか。

もうずいぶん昔、高尾山で行方不明になった人が何年間も発見されていないという話を聞いたことがあるが、そうしたケースはここ何年も起きておらず、たいていは短時間で、長くて も1、2日で見つかっているという。

首吊り自殺は数年に1件ぐらいあるそうで、登山者が自殺した人をたまたま発見したとか、自殺願望者が死にきれずに救助隊に出動要請したこともあったが、極めてレアケースとのことだ。