人の名前は忘れるが円周率10万桁暗記

先日、円周率の暗記で世界記録を持つ原口證さんにお会いしました。原口さんは現在63歳。50代で円周率の魅力に取り憑かれ、2004年に5万4000桁の世界新記録を達成。06年には10万桁の暗記にも成功しています。10万桁といえば、文庫本1冊分に相当します。「どれだけ記憶力のいい人か」と思えば、人の顔や名前もなかなか覚えられない、円周率の暗記以外はまったく普通のおじさんなのです。

原口さんは、円周率を語呂合わせで暗記しています。そしてその語呂合わせが、宇宙の神秘を感じさせるストーリーになっているのだそうです。円周率にロマンを感じ、強い興味を持っていることが、原口さんの暗記力の秘密です。

ここが脳のおもしろいところなのです。一般的に、意味のない数字を覚えるとき、暗記できるのは7、8桁だといわれています。それが、自分がおもしろいと思えることを見つけ、記憶法を工夫して徹底的に突き詰めると、驚異的な力を発揮することができるのです。

脳は、放っておいても変わってくれませんが、行動を起こすことで変化します。まずは、興味のある分野や、数字に強くなることでメリットがある分野を選び、関連する数字を「覚える」ことを自分自身に宣言しましょう。そして、自分は覚えられると言い聞かせることです。苦手意識を持って取り組むと、前述のようにうまくいきません。

例えば投資を始めてみるのもよいでしょう。そうすれば、これまで単なる記号だった数字に意味が生じ、頭に入りやすくなります。ドーパミンが出てモチベーションも上がるのです。つまり、脳は、対象を好きになると、それを理解しやすくなる脳に変化していくのです。数字に取り組むおもしろさを知ることが第一歩です。

(大井明子=構成)